【四章】ー空間ー

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 その後に続き、和也の方も家の中へと入って行くのだ。  望は先ず玄関にある電気を点け、リビングに向かって電気を点ける。  だがその直後、望の視覚に入って来たのは裕実と雄介の姿だ。  これは望の幻であろうか?  そう思っているのかもしれないのだが、次の瞬間、 「おかえりー!」  と雄介と裕実はほぼ同時に望に向かってクラッカーまでも鳴らしてくる。  今日は確かクリスマスでも望の誕生日でもなかった筈だ。  じゃあ何故望の家でこんなパーティみたいな事が行われているのか!? というのが気になる所だ。  望はそんな状況にパニック状態いると、 「何!? まだ、何も気付いてねぇの?」  そう、和也は望の後ろから声を掛けて来て、望の肩へと手を乗せる。 「え? あ、まぁ……今の俺には本当に何が起こっているのか? ってまだ、把握出来てねぇんだけど? だ、だってさ、雄介はさっき病院に来た時には訳の分からない行動をして、直ぐに行っちまうわぁ。 そんで、帰って来たら、雄介はここに居んだろ? しかも、家でなんかパーティみたいな事してるしさ」  和也はクスリとすると、 「相変わらず、望っていうのは鈍ちゃんだよなー。 つーか、気付かれなくて良かったっていうのかな?」  和也は望の後ろから今度は望の頭をポンポンと叩くと、 「あのパーティの名目を見ても気付かないのか?」  そう、和也に言われて望は今まで頭を俯かせていたのだが、顔を上げて和也が言っていたパーティの名目を読み上げてみる。 「祝・雄介! 東京春坂市の消防署に異動! はぁ!? だって、さっき……診察室の時には異動の話は聞いてたけどさ、すっげぇー! 雄介の奴、こう悲しそうな切なそうな顔してたじゃねぇか……」 「あ! アレ? 雄介の演技。 そうそう! サプライズって奴の為になっ! あん時の俺、雄介の演技に笑い堪えるの大変だったぜ。 ま、まぁ、とりあえず、このサプライズに俺は雄介と裕実と相談してあげたんだけどさ」
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