【五章】ー雪山ー

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 そう和也は最後の言葉を裕実の方へと振ると、裕実の方は顔を真っ赤にして俯いたままだ。 「ん……ま、そういうことだからさ」 「しゃーない……俺が行ってくるしかないみたいやしな」  雄介はリビングを出て望の部屋へと向かう。  もう雄介からしたら慣れた家だ。 雄介は間違えることなく一直線に望の部屋へと向かう。  雄介は望の部屋の前まで来ると、望の部屋のドアを二回ほどノックする。  当然のことながら中からは返事はない。  雄介は仕方なくドアノブに手を掛けると、鍵は閉まっていない。  望の家は全部の部屋が内側から鍵を閉められるようになっているのだが、望が隠れてしまった、というか籠った部屋というのは望の部屋のはずなのに鍵が開いている。  雄介が部屋の中へと入ると、望はベッドの上でうつ伏せの状態でいる姿が目に入ってきた。  そして雄介は自分の頭を掻きながら望のベッドの端へと座る。  雄介は望の頭を撫でると、 「どうないしてん? みんなの所に戻らへんのか?」  だが、その雄介の言葉に望はまだ返事はない。  雄介はそんな望の行動に息を吐く。 「なんで……お前って、そんな性格なん?」  雄介にしては珍しく望に向かってストレートな言葉で聞いてみたようだ。  いつもなら、こうはストレートに望に向かって物事を聞くことはないのだが。  その雄介の言葉に目を丸くしたのは望の方かもしれない。 もう雄介とは一年以上一緒にいるのだから、望の方だって雄介の性格は知っているつもりだからだ。 「……ってかさ、お前だって、お前らしくねぇんじゃねぇのか?」  望はそう言いながらベッドの上に半身を起こす。 「仕事で何かあったのか?」 「いや、仕事では何もないよ……」  だが、いつも以上に暗い声の雄介が気になる望。 「お前なぁ、俺の前で嘘なんか吐くんじゃねぇよ」
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