【五章】ー雪山ー

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 望は照れ臭いのか雄介に見られないようにするためか、それとも好きな人とさり気なくくっついていたいのか、雄介の背中に寄りかかりながら腕を組んで聞くのだ。 「嘘なんか吐いてへんで……」 「バーカ……俺は気付いてんだよ。 だってさ、今日の雄介、テンションが低いしよ。 声も低いんだよ」 「そ、そんなことは!?」 「それに、今の俺の言葉に動揺もしてんじゃねぇか。 何があったんだ? 俺はお前にとって頼りない奴なのか?」  そこまで言われると今度は雄介の方が何も言えなくなってしまったようだ。  雄介は少し考えると、望の方に振り向き望の体を後ろから抱き締め、 「んー! 何だよ! 今は話の方が先だ! 離せ!」 「ホンマ、分かってへんのは望の方やでぇ」  更に雄介は望の体を強く抱きしめると、 「どうして、今日は和也達を家に呼んだん? 今日は久しぶりに望とゆっくりできる日やったんやで。 拗ねてしまいたい気分なんは俺の方やねんけど。 望みたいに簡単に拗ねられたら楽なんやろうけどな。 ホンマのこと言うと、今日は望と二人きりでおりたかった日やったのに……。 そうやないと、望が俺に甘えてきてくれへんやろ?」  その雄介の言葉に望は顔を真っ赤にし、そこは望にしては珍しく、素直に、 「ゴメン……」  と言う。 「だけど、今日はどうしてもアイツらが来たいって言ってたしさ、断る理由が見つからなかったんだよ」 「ま、でも……今日はもう来てもたんやし、追い返すわけにはいかんしなぁ。 とりあえず、今は下に行こうか?」 「あ、ああ、分かったよ」 「……の前に……」  雄介はその言葉が合図かのように、望は雄介の方に顔を向けると唇を重ねる。 「これで、おあいこだな」 「せやなぁ」  望は雄介の前ではだいぶ素直にはなってきたのだが、やはりまだ和也達の前では素直になることはできないようで、雄介はそこに不満があったらしい。  二人は少しだけ二人だけの時間を過ごすと、和也達が待っているリビングへと向かう。
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