【五章】ー雪山ー

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「あ! せや! 望って、和也に抱かれたことあったって言っておったよな? その時はどんな感じやったん?」 「……はぁ!? 今更、そんなこと聞かれても、もう、そこは覚えてる訳ねぇだろ」  雄介にそんなことを聞かれて望は顔を真っ赤にしながら答える。  そう望が顔を真っ赤にした理由は、「お前とやり過ぎて、お前との思い出の方が多いのだから、過去の和也とのことなんか忘れちまったよ」と言おうとしたのだが、流石にそれを口にするのは恥ずかしすぎたのか、自分がそう思ってしまったということに顔を真っ赤にしてしまった。いわゆる自爆ということだ。  それにそんなことを雄介に言った時には雄介のことだから調子に乗るのは間違いないことでもある。  そんなことを言ったなら雄介はそこで我慢が出来なくなってしまって、ここで抱かれるのは間違いない。  ここで、そんなことをされたら望だって裕実同様に逆上せてしまうであろう。  そこまで想像した望はそれを雄介に言わないようにと心の中にしまってしまったようだ。 「望なら、記憶力あんねんから、覚えておるやろ?」 「覚えてねぇつったら、覚えてねぇの。 それに、恋愛感情も何もない奴に抱かれても気持ちいいと思うか!?」 「そないな風に言うっていうことは、ええようにとってもええってことやんな?」  そう雄介はニマニマとしながら望の体を後ろから抱き締める。  望は一つ大きなため息を吐くと、 「……ったく。 そこはそういう風に思ってもいいんじゃねぇのか?」  そう望は呆れたように答える。  本当は遠回しではあるのだが、雄介にはそう思って欲しかったというのが本音なのかもしれない。 「あー、もー!! めっちゃ嬉しいわぁ!! ホンマ、俺、望のこと好きになって良かったって思うたしな」  その雄介の言葉に望は雄介には表情が見えないとばかりに微笑むのだ。 「なぁ? 望……さっき、裕実が逆上せてまった理由教えてくれへん?」 「ああー、それか? そんなに気になるもんなのか?」 「ああ、なんや、俺だけその理由知らないのが悔しいっていうんかなんていうんか?」  そんな子供みたいなことを言う雄介に吹きそうになりながらも、 「つーか……お前は俺のことしか興味ねぇのかよ。 和也だって、友達としては一年以上は付き合ってきてるだろ?」 「んー、まぁ、俺はホンマ望以外の人には興味あらへんしな」  そう開き直ったように言う雄介にため息を漏らす望。
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