15人が本棚に入れています
本棚に追加
孫策が長江を渡り曹操の拠点である許昌を攻撃しようと企てた時のことである。
于吉を軍に同行させていた。
※注・同行の理由は記されていないが、合戦の勝利のための祈祷や呪術、占いを行わせるためだったと思われる。
ところが干ばつ《かんばつ》のため河の水は少なく、船は一向に進まず、苛立った孫策は自ら兵のもとに向かい、檄を飛ばそうとした。
すると兵たちは于吉のもとに集まって、教えを受けていた。
孫策は、この様子を見て激怒した。
「俺が于吉に及ばぬと申すか。さっさと奴をひっとらえよ」
于吉が引っ立てられてくると、孫策は于吉を罵った。
「雨が降らず川の水が干上がり、船が前に進まぬ。これではいつ許昌に着けるか分からん。俺が早く船を進めようと苦労しているのに、貴様は俺の気も知らず、船の中で惰眠をむさぼり、軍律を乱した。死罪に処する」
孫策は于吉を柱に縛りつけ、
「天を動かし、雨を降らせてみよ。昼までに雨を降らせたら命を助けるが、出来なければ即刻死罪だ」
と告げた。
まもなく雲気が立ち上り、真昼になると大雨が一斉に降り、川の水は満ちあふれた。兵たちはこれで于吉が助かると喜び、于吉のもとに駆け寄って祝いの言葉を述べた。ところが孫策は、理不尽にも于吉を殺害した。
兵たちは悲しみ、遺体を人目につかないところに安置していたが、不思議なことに翌朝、遺体は消えていた。
于吉の死後、孫策がひとりでいると、度々、于吉がすぐそばに姿を現すようになった。
孫策は于吉への後ろめたさから、次第に精神が追い詰められていった。
孫策の傷が治りかけたとき、孫策が自分の顔を見るために鏡を覗くと、鏡には于吉の姿が見えた。後ろを振り返っても誰もいない。それが何度も繰り返された。
孫策が恐怖のあまり鏡を床に投げつけ、大声で叫ぶと、体中の傷口が裂けてそのまま絶命した。
于吉とは琅邪の人。道士である。
※注・なぜ傷を負ったかは全く記載なし。
↓中国の古い連環画(絵物語)より引用。于吉のために死亡する孫策
最初のコメントを投稿しよう!