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第39話 四天王クロウとの対峙 ~ソフィアサイド~
いいぞいいぞ。
その血気盛んなところ。
ワシ好みじゃ。
ちまちまとやるのも飽きていたところじゃったからのぅ。
大将同士一騎打ちといこうじゃないか。
クロウとやらは血走った目でワシを見て、なりふり構わず突っ込んできた。
なかなかいいものは持っていそうじゃが……
まだまだワシが本気出さなくてもよさそうじゃ。
クロウとやらの突進を余裕を持ってかわす。
「ドンっ」
そのまま壁に突っ込んでしまったようじゃ。
壁には大きな穴が開き、パラパラと周りが崩れてきておる。
「本当にお前らは突っ込むしか能がないのかのぅ」
「もう少し楽しませてくれ」
壁の中から出てきたクロウとやらに言い放つ。
「お前は誰だー!!」
「オレ様をクロウ様だと知っての事か」
「おぅ、クロウとやらとは知っておるぞ」
「そのうえでここに来ておる」
クロウとやらはちょっと驚いた顔をしておる。
いいぞ、そういう顔が見たいのじゃ。
「なぁ、ゾルダ」
「あまり挑発しなくても……」
「今の目的はあくまでもフォルトナの救出だったんだからさ」
どうやらあやつはクロウとやらが投げ出した小娘の娘を助け出していたようじゃ。
「まぁ、固いことを言うな、おぬし」
「ワシの目的はここで暴れることじゃからのぅ」
「アグリ、ありがとー」
「ゾルダ、ボクは大丈夫だから、気にしないでー」
クロウとやらの方に視線をやると、さらに驚いた顔をしておるようじゃ。
「ん?」
「今、この女のことをゾルダって言ったか?」
「ゾっ……ゾルっ……ダ……」
「ほぅ、ワシの名前を知っておるのか」
ただ血気盛んな奴だと思っていたが、このワシを知っておるようじゃな。
「でもなんでお前がここにいる」
「封印されていたはずじゃ……」
おっ、これはワシが封印された経緯も知っておりそうじゃ。
単に倒すより、まずはワシがこうなった原因でも聞こうかのぅ。
「ほぅ、封印したことを知っておるのじゃな」
「ゼドはワシに何をしたのじゃ」
「ワシと一緒にいたやつらはどこにいったのじゃ」
「オレ様は何も知らんぞ」
「ゼド様から聞いただけで、何も知らんぞ」
クロウとやらは、目を激しく動かしておる。
動揺しておるみたいじゃのぅ。
もう少し脅せば、何か言ってくれそうじゃ。
「ゼドからどのように聞いたんじゃ」
「ほれ、はやく話せ」
「オレ様はオレ様は……」
クロウとやらは何を言い淀んでおるのじゃ。
「なぁ、ゾルダ」
小声であやつがワシに話しかけてきた。
口に人差し指をつけ何やら言っておる。
「しーっ」
「それ以上問い詰めると、ゾルダの正体がフォルトナにバレちゃう」
ふん。
そんなのしるか。
小娘の娘の方にも目をやってみたが、不思議そうな顔をしておる。
「フーイン?」
「何の話かなー」
まぁ、小娘の娘にバレたと大きな問題にならんじゃろ。
まずはゼドの企みが何かを知ることが先じゃ。
いったん、あやつの話は無視じゃ、無視。
「おい、はやく話せ、クロウとやら」
「ゼド様が……」
「邪魔だから封印したと……」
「まともに戦っても勝てない相手だから、頭を使っただけだと……」
「オレ様は……オレ様はそれしか聞いてないぞ!」
ゼドはワシが邪魔だったのか。
少しは目をかけておったのじゃがのぅ。
「勘弁してくれ」
「オレ様はそれ以上は聞いてない」
「本当だ」
クロウとやらは体を振るわせておる。
「ほぅ」
「で、ワシの事はなんて聞いておるんじゃ」
「さっ……最強の魔王だったと……」
「お前らが束になっても勝てないと……」
「だから封印したと……」
ゼドのやつ、ワシの力は認めていたってことかのぅ。
嬉しいことを言ってくれるのぅ。
「他には何か言っておったか」
「ワシの配下たちはどうなったのじゃ」
「同じように防具に封印したとだけ……」
あいつらも封印されておるのじゃな。
「で、その封印した防具はどこにあるのじゃ」
「し……知らんっ」
「ゼド様はすぐに捨てたとだけ言っていた」
となるとワシのようにどこかの倉庫にあるとか……
誰かが身に着けているとかかのぅ。
探し出すのは難儀のようじゃな。
「頼む、見逃してくれ」
クロウとやらが懇願をしはじめた。
「なんだ、一緒に戦ってくれんのか」
「つまらんのぅ」
「オレ様は配下を連れてここから撤退する」
「もう街にも手を出さない」
「だ、だから……勘弁してくれ」
向かってこない奴を相手にしてもつまらんしのぅ。
しかしこれで四天王か……
四天王も地に落ちたのぅ。
「仕方ないのぅ」
「分かったから、さっさと立ち去れ」
「ただ、次にワシの前に出てきたときは……」
「容赦しないからのぅ」
思わず顔がにやりとしてしまった。
今回は特に暴れ足りんかったからのぅ。
「おい、お前ら、ずらかるぞ」
「へい」
クロウとやらの手下が返事をして部屋を出ていこうとしておる。
素直でよろしい。
さてと……
このあとはどうするのかのぅ。
とりあえずあやつと話をせねば。
クロウとやらが部屋を出ていく前に背を向けあやつのところに向かっていった。
すると……
「ダンっ」
床を強く蹴り上げる音が聞こえると、クロウとやらがこちらに向かってきおった。
「油断したな、ゾルダぁ」
「これでオレ様の勝ちだー」
おっ、楽しませてくれるのぅ。
まぁ、帰ると見せかけて襲う。
弱い奴がやる常套手段じゃの。
剣を持ち迫りくるクロウとやらの方へ一瞬で振り返る。
そしてがしっと頭を鷲掴みにしてみた。
「さっき伝えたよなぁ」
「次に会ったら容赦しないと……」
「聞こえてなかったかのぅ」
剣を振り回しじたばたするクロウとやら。
「冗談だよ、冗談」
「ホントに帰るから」
「み……見逃してくれよ」
「残念だが、次はないんじゃよ」
「闇の炎(ブラックフレイム)」
クロウとやらに黒炎が燃え広がっていく。
「ワシは慈悲深いんじゃぞ」
「本当にこの場から立ち去っておったら見逃したのにのぅ」
「ギャーーーーー」
クロウとやらの野太い叫び声がこだましておる。
「苦しいかのぅ」
「では、楽にしてあげよう」
「闇の炎(ブラックフレイム)」×10
クロウとやらがいる方向の壁や扉などの建物が吹き飛んでいく。
合わせてクロウとやらの手下どもも跡形もなく焼けていく。
暴れたりなかったからちょうど良い。
「やり過ぎだよ、ゾルダ」
「そうか?」
「これでも手加減したがのぅ」
「だってこれ見てよ」
「敵だけじゃなくて砦もここから半分跡形もないよ」
「まぁ、いいじゃろぅ」
「敵の殲滅がワシの目的じゃからのぅ」
「だから違うって」
「フォルトナの救出だって」
「砦をこんなんにしちゃって……」
いちいち細かいのぅ。
救出だろうが殲滅だろうが、どちらもで問題ないはずじゃ。
どちらの目的も達成したのじゃからのぅ。
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