第37話 人質の救出 ~フォルトナサイド~

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第37話 人質の救出 ~フォルトナサイド~

アグリたちに先んじて砦まで来てみたけど…… 状況は母さんたちがある程度調べていてくれるしー まずはその時と変わってないかの確認かなー たしかこのあたりにあいつらも知らない隠し通路が…… あーっ、あったあったー これで中には簡単に忍び込めるんだよなー ただ問題はここからなんだよなー 人質がいるのが地下の牢屋でー この隠し通路まで見つからずにどうやって連れて行けるか…… もう少し調べてみないとなー 辺りを見回してサササッと物影に行き様子を伺ってみる。 この辺りは誰もいないみたいだねー。 もう少し先へ行ってみよー 注意を払いながら先へ進んでみる。 前から誰か来たー さっと飛び上がって、天井へ身を隠す。 「しかし、クロウ様も人使い荒いよな」 「何日も何日もここで人質のお守りだもな」 「しかも外へ出るなだし」 「そうだな」 「俺もそろそろ限界」 「クロウ様も今はここにいないし……」 「ちょっとだけなら外へ行ってもかまわないよな」 「俺も行くぞ」 「退屈でかなわん」 「ここの見回りが終わったら行こうぜ」 クロウの手下も大変そうだな― ここの周りは何もないし、確かに退屈だよねー 同情はするけどねー ただバカな手下でよかったよー こいつらが外へ出たところで、人質を連れ出せそー とりあえずこいつら以外がどこにいるかを把握しよー クロウの手下の二人が通り過ぎたので、さらに奥へと進んでみた。 奥の部屋や上の階など部屋という部屋を見て回ってみた。 ベッドで寝ている者 椅子に座ってうたた寝している者 他愛のない話をしている者 おおよそ緊張感とはほど遠い状況だった。 たしか母さんたちが調べたときはこんなんじゃなかったんだけどなー 時間も経ってダレてきたのかな? トップがいないのもあるけどねー でも、こちらにとっては好都合だしー これは人質救出、楽勝かもねー そうなったら、ゾルダに褒めてもらえるかもねー ちょっといろいろ考えているうちに、手下の二人が外に出て行ったようだ。 さてと……人質を救出しに行こー 案の定、地下の通路から牢屋まで誰もいなかった。 これはすんなりと行きそうかなー そして牢屋の前に来ると人質の1人が話しかけてきた。 「あなたはいったい……」 「しーっ」 「まぁ、正義のヒーローってことにしておいてー」 「ここから助け出してあげるよー」 牢の鍵も大したことがなかった。 苦労もせずに鍵を開けると人質を中から助け出す。 「隠し通路まで案内するから、そこから外に逃げ出してねー」 「そこまではボクについてきてねー」 敵はあれだけの状況だけど、慎重に進めないとねー 小さい子供もいるみたいだし。 地下の通路から1階へと歩を進める。 周りを慎重に見回しながら。 とりあえずまだ誰もいないようだ。 慎重に進みながらではあるが、なんなく隠し通路まで到着した。 「やっぱり楽勝だねー」 隠し通路の扉を開けて人質たちを誘導する。 「この先まっすぐ進むと出口があるからねー」 「そこを出たら、男の人と女の人がいるから」 「助けを求めてねー」 「わっ、わかりました」 「ありがとうございます」 人質たちが隠し通路を進むと、ボクは扉を閉めた。 さてと… もう少し情報収集しようかなー と考えた瞬間に後ろから物音がした。 振り向くと、先ほど外に行ったはずの手下二人がこちらを見ていた。 「あちゃー」 思わず天を仰ぐ。 「お早いお帰りで」 「誰だ、お前は!!」 「ボク?」 自分で自分に指をさしてしまった。 「そんなさー」 「『誰だ』って聞かれて答えるやついないでしょー」 辺りを見回し、逃げ道を探すが見つからない。 隠し通路から逃げられなくもないけど…… それをしたら、せっかく逃がした人質も捕まえられちゃうしなー 今は時間を稼がないとねー 人質が逃げ出してくれれば、ゾルダの下へ知らせてくれるはず。 それまでは、とりあえず引っ掻き回すかー。 「こいつを捕まえろ!」 大きな声が砦内に響き渡る。 それに呼応するように、手下どもがわんさかと出てきた。 とにかく簡単には捕まらないよー 手下の隙をついて逃げ回り始めた。 時には股下をくぐり…… 時には頭上を飛び越え…… 縦横無尽に逃げ回る。 「すばしっこい奴め」 「逃げるな、こいつ」 「あたたた」 「邪魔するなお前」 混乱につぐ混乱で砦内がひっちゃかめっちゃかになっていく。 こんなところどうなってもいいしねー 思いっきり逃げ回ろう。 手下どもとの鬼ごっこが始まって数十分。 この調子ならゾルダたちが来るまで逃げ回れるかもねー 「楽勝ー」 と感じたのも束の間。 周りの空気が一変する。 「お前ら何をしているんだー!!」 ドスの効いた声が砦内に響き渡る。 この声は…… 恐怖で顔を歪める手下たち。 さっきまで好き勝手に動き回っていた奴らだが…… 急に統率の取れた動きでボクを追い詰めていく。 さっきまでの楽勝ムードが変わっていく。 逃げるところ、逃げるところ、先回りされて、行動範囲が狭まっていく。 そしてとうとうある一室に追い込まれてしまった。 「あーあ」 「とうとう追い詰められちゃったなー」 ちょっとうなだれて、ため息をついた。 少し経ち、部屋の扉が開くと…… そこにはデシエルトの屋敷でみた奴が入ってきた。 「よぉ、嬢ちゃん」 「ここに何しに来たんだ」 さっと手を伸ばしたかと思うと、ボクの首に掴みかかる。 「……しっ……知ら……ない……ね……」 「言う……訳……ない……よ……」 首を押さえられているから声が出ない。 「まぁ、いい」 「オレ様に逆らってもいいことはないぞ」 「ハッハッハッハッ」 ゾルダたちが来る前に捕まってしまった。 ちょっとミスったなー
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