第45話 封印の謎 ~ソフィアサイド~

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第45話 封印の謎 ~ソフィアサイド~

宿屋についたワシたちは、食事をすませて、一息をつくことになった。 あやつもひどく疲れたようで、ベッドに横たわっておる。 小娘の娘も背伸びをしながらくつろいでおるわ。 さて、ワシはどうしようかのぅ。 食事の時に少し飲んだが、それではまだ足りん。 もう少し追加で飲みたいのぅ。 こっそり持ってきた酒を器に注いで飲み直しはじめた。 そこへマリーがやってくる。 「ねぇ、ねえさま。  ゼドっちのやつ、何を企んでいたのかな」 そう言いながら、ワシの器に酒を注ぎ足す。 「うーん。  まぁ、細かいことはわからん。  言えることは、ワシが邪魔じゃったということじゃろ」 ゼドは野心を抱いていたには違いない。 何かしらでワシを引きずり下ろす手立てを考えておったのじゃろう。 「でもそれなら、真正面からねえさまと戦えばいいのに。  ゼドっちは卑怯なんだから」 そう言いながらマリーは口をとがらせて怒っておる。 「ワシに歯向かっても勝てんからじゃろぅ」 あの時点でも負ける気はしなかったからのぅ。 今も負ける気はしないがな。 だから小細工するのもうなずける。 ただ何故隙を見て殺すのではなく、封印だったのかのぅ。 封印だとあとあと解かれるリスクがある。 そのリスクをゼドが認めるのかどうか…… あやつからすると、その少しのリスクも回避したがるはずだしのぅ。 まぁ、ただ殺せぬほどワシが強かったということやもしれぬが…… そんなことを考えておったら、マリーはワシの顔の目の前にきた。 「あと……あの男はなんですの。  なぜあいつがマリーの兜を持つと、マリーが出てこれるの?」 マリーはベッドで寝ているあやつを指さしてワシに疑問を投げかける。 「へっ?」 あやつがマリーの言葉が聞こえたのか、ベッドの上で起き上がった。 「もう、お前はマリーの兜を絶対手放すなよ。  お前が手放したら、ねえさまにくっつけなくなるんだから」 あやつがベッドから起き上がる拍子に、兜がずれそうになるのを見かねてマリーがつっかかていく。 しかし、マリーは何故にあやつのことになるとそうつっかかるのじゃ。 そう嫌うほどのやつではないんだがのぅ。 興奮気味のマリーを落ち着かせながら、封印のことでワシが思いつくことを話はじめた。 「まだ全然わからないのじゃが……  ワシは封印を解くためのカギがあやつだと思っておる」 この世界で封印を行う場合は必ず解除キーとセットで施さないといけないのじゃが…… その解除キーが難しければ難しいほど封印は解けにくくなる。 その封印の性質から考えれば、今まで一緒に行動をしてきて感じておるから、 あやつが解除キーであるとの確信を持っているのじゃ。 「ただ、一緒にいるだけでは、封印は解けておらんので、そこではないのかのぅ。  時間なのかあやつの強さなのかで封印の効果は薄れておるから、  共に行動しておけば、そのうち封印は解けるやもしれぬ」 その言葉を聞いたマリーは満面の笑顔で、ワシを見ると 「じゃあ、マリーも、あいつと一緒にいれば、あの忌々しい兜からも解放されるのね」 上機嫌になっておった。 マリーが笑顔だとワシも顔が綻んでくる。 「じゃから、そう毛嫌いするな。  あやつはワシたちの生命線でもあるのじゃから」 マリーの頭を撫でながら、注がれた酒を一気に飲み干す。 その様子をみたマリーは、空いた器に酒を注ぎ込んでくれた。 まだ謎が多い封印じゃが、あやつと共にゼドを倒せば確実に封印は解けるじゃろう。 そうは思うが、この封印自体をゼド自体が施したのか、他のものがやったのか…… 一朝一夕で考えたものではないはずじゃから、そう簡単には解けぬやもしれぬ。 でも何故ゼドがこのような封印をしたのかは謎じゃ。 ワシを抹殺したかったのだろうから、強力な封印を考えておったはず。 確かに、魔王と勇者は相容れないものではある。 共に行動するようになるとは、ゼドも思わなかったのじゃろぅ。 まぁ、ワシも前はそんなことは微塵とも考えなかったがのぅ。 注がれた酒を飲みながら、ゼドの行動を考える。 ゼドは残酷冷徹な上に頭も切れるし慎重に慎重を重ねていく。 ワシの下におったころから、上に立つことはずっと考えていたのやもしれぬ。 慎重に考えた結果、封印することに落ち着いたのじゃろう。 まぁ、誰かの入れ知恵はあったかと思うが…… 「のぅ、マリー。  今頃、ゼドは魔王になれて喜んでおるかのぅ。  ワシを退かせて、魔王の座につけたのじゃから」 念願の魔王になっておるのじゃから、表面は冷静でいたとしても…… そんなことを考えておると、ゼドに対してふつふつと憎しみが湧いてきおる。 「マリーは、ゼドっちのことはよくわからないもん。  あんなやつのこと」 マリーはそう答えてふくれっ面になる。 封印されたことをだいぶ怒っているようじゃのぅ。 「まぁ、今いろいろ考えても仕方がないのぅ。  会った時にギタンギタンにしてやるのみじゃ」 「そうですわ  マリーも一緒にゼドっちのやつをギタンギタンにしますわ」 器に残っていた酒を飲みほし、さらに酒を飲み続ける。 今更ゼドの事をあまり考えてもしかたがないかもしれぬ。 とりあえず今は酒を飲もう。 こう飲めるのも数百年ぶりじゃし、喜ばしいひと時じゃ。 「ほれ、マリー。お前も飲むがよい」 マリーに器を渡して、酒を注ぐ。 「ありがとうございます、ねえさま。  いただきます」 一気に飲み干すマリー。 お互いに酒を酌み交わしながら、数百年ぶりの再会を祝うのだった。
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