第47話 荒れた天気の正体は…… ~ソフィアサイド~

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第47話 荒れた天気の正体は…… ~ソフィアサイド~

しかし、人というのは面倒じゃのぅ。 いろいろ頼んだり頼まれたり。 己の事だけやっておればそれでいいのではないか。 あやつがいろいろと頼まれておるのを見ていると、そう感じたりするのじゃが…… 「のぅ、おぬし。  大変じゃのぅ。  いろいろと厄介ごとを引き受けて。  ワシじゃったらそんなこと聞かんがのぅ」 次の目的地に向かう道すがら、あやつに問う。 「そもそもそれが俺がここに呼び出された理由でもあるし……  確かに何でもかんでもとは思うことはあるけど、  困っている人は放っておけないよ」 あやつもあやつなりに考えるところはあるようじゃな。 それでも引き受けておるところをみると、人がいいのじゃろぅ。 それか、よっぽどのバカじゃ。 「まぁ、ワシはゼドをぶっ潰せればいいし、  強い奴らとも相まみえることが出来ればいいんじゃがのぅ」 長い間外に出れなかったのもあって、ゆっくりと外の世界を満喫したいとは思う。 そうは思うのじゃが…… 「とはいえ、早くゼドをぶっ潰したいので、先を急がんかのぅ」 とあやつを急かしてみる。 しかし、あやつは、 「急いで行ったら、俺が死ぬよ。  確かにゾルダは強いけど、俺はそんなに急に強くはなれないし、死んだら困るのはゾルダだろ」 と正論を言ってくる。 おぬしが弱いのはわかりきっておる。 だから鍛えてきたのじゃが…… 確かにゼドたちと戦うには、まだ足りんやもしれぬ。 ただ出会った頃に比べたら格段には成長しておるがのぅ。 「わかった、わかった。  おぬしに死なれては、また剣の中じゃ。  おぬしのペースでいいのじゃが、ワシら気持ちもわかってくれ」 急いても仕方ないので、しばらくはおぬしに付き合っていくしかあるまい。 ゼドのところに行くまではのんびり構えておくかのぅ。 そんな話をしながら、ワシらは砂漠を超えて、問題の山のふもとに到着した。 「なんだか急に寒くなってきましたわ。  ねえさま、寒いですわ」 マリーの奴はそう言うとワシにぴったりとくっついてくる。 「今まで暑かったのになー  急に天気が変わり過ぎだよー」 小娘の娘も寒さに震えだしてきたようだ。 山頂の方を眺めると、雲で覆われて何も見えないのぅ。 少し上の方を見ると一面が白く覆われておる。 「いつもはこんな天気じゃないのかな。  これが異常気象ってやつなのかな」 あやつも山を眺めながらそう言っておった。 「デシエルトさんが言うにはこの天気でムルデと行き来できなくなっているらしいけど……  フォルトナ、アウラさんは調査してないの?」 あやつは、小娘の娘に確認しておる。 「うーん。  聞いてないなー。  そこまで手が回ってないのかなー」 どうやら小娘の娘は何も知らないらしい。 「めずらしいのぅ。  あれだけいろいろ調べておって、知らないことはなさそうなのにのぅ」 小娘の情報網は一目置いていたのじゃが、さすがに手が回っていないらしい。 「この天気の所為もあるかもしれないけどねー  とにかくここの情報は何もないよー」 小娘の娘は呑気にそう答えた。 「出たとこ勝負なのかな。  これだけ天気が荒れているのであれば、何かしらがあるんだろうし、  まずはその原因をつかまないと」 覚悟を決めたのか、あやつは先頭に立ち、山を登り始めた。 ワシやマリー、小娘の娘はその後についていく。 しばらく歩いていくと、そこは一面の銀世界になっておった。 しんしんと降る雪があたりを覆っていく。 その雪を見て、マリーははしゃいでおる。 さっきまで寒さに震えておったのにのぅ。 「ねえさま、雪ですわ、雪。  冷たくて気持ちいいですわ」 マリーは無邪気よのぅ。 一つ一つのことを感情を豊かに表現する。 雪玉をつくっては投げてみたり、ダイブして雪に埋もれたり。 小娘の娘も加わって、余計にはしゃいでおる。 反対に気を張り詰めておるのはあやつじゃ。 いつ魔物がくるのか、どこから来るのかを警戒しながら進んでおる。 そこまで警戒しなくてもいいのにのぅ。 「おぬし、ワシの索敵能力のこと忘れておらんか?  そこまで警戒しなくても、大丈夫じゃぞ」 「それはそうなんだけど……  急にってこともあるじゃん」 分かっていても……というやつかのぅ。 でもその調子でいったら、それこそ魔物と対峙するようなことがあったら、疲れて何もできんじゃろぅ。 「もうちょっと気楽にせい  体がもたんぞ」 さらに登っていくと、徐々に横なぶりの雪になってきおった。 道中、単発で魔物が襲ってくるも、どれも弱弱しく、あやつ一人でなんとかなるものばかりだった。 小娘の娘曰く 「普段はここまで寒くないからねー。  ここに住んでいる魔物たちは、寒さで弱っているねー」 だそうだ。 どいつもこいつも雪で参っているのじゃろぅ。 こんなのが襲ってきてもつまらんのぅ。 「やはりそうなると、この荒れた天気は魔物の所為なのかもしれない。  だんだん寒さも雪も厳しくなってきているし、そっちに向かえばいるかもしれない」 あやつはさらに荒れた天気の方へと向かっていく。 よくもそこまで真剣に取り組めるのぅ。 しばらく進むと、魔物の質が変わってきおった。 明らかに氷属性を持った魔物ばかりが出てきおる。 さすがにこいつらは寒さに強いので、元気いっぱいじゃ。 しかも数が多くなってきよる。 あやつも奮闘しておるが、ワシもちょいと助けるかのぅ。 「おぬしは下がっておれ。  ワシが相手するぞ」 と言って、前に出ようとした。 すると、マリーがワシの前に割って入ってきおった。 「ねえさまの手を煩わす必要はないですわ  マリーがやります。  見ててください、ねえさま」 「そうかそうか。  では、頼むぞ、マリー」 まぁ、ワシよりは劣るが、伊達にワシの側近をやっているわけではない。 任せられるだけの力はあるからのぅ。 「はい。ねえさま」 元気に返事をしたマリーは魔物の群れと対峙する。 「ねえさまにいいところ見せないと」 マリーはいつもより力が入っておるように感じる。 「いきますわよ。  フレイムストーム!!」 マリーから大きな炎の渦が飛び出し、あたり一面焼き尽くしておる。 これならひとたまりもないじゃろう。 魔物の群れは炎にみるみるうちに包まれていく。 そして全てを焼き尽くしおった。 「どうですか? ねえさま  マリー凄いでしょ?」 自慢げな顔をするマリー。 ワシは 「ようやったようやった」 と頭を撫でて褒める。 マリーはさらに得意げな顔をする。 あやつと小娘の娘はというと…… あっけにとられた顔をしておる。 「マリーも規格外だな……」 「すごいねー、マリーちゃん」 さらに褒められたマリーは満面の笑顔になっておる。 調子に乗らなければいいのぅ。 さらに進んでいくと、何やら吹雪もおさまり、曇天模様になってきた。 どうやら、この辺りに原因の魔物がいるようじゃのぅ。 辺りの気配を見てみると…… 「うむ、ビンゴじゃ。  あそこに強力な気配があるぞ」 急いで気配の方に向かうとそこには、全身氷のとげで覆われた銀色の大きな飛竜が出てきた。 「グギャー」 大きな咆哮を放ち、こちらを睨みつけてきた。 この感覚、たまらんのぅ…… 強そうな相手を見るとゾクゾクしてくる。 今回もひと暴れしようかのぅ。
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