テレビの中

電源喪失

　停電だ。

　どこもかしこも真暗になった。

　原因はまだわからない。
　ラジオの電池が見つからないのだ。

　懐中電灯は一応わかるところにあったので転ばない様に足元を照らす。

　むやみに動くのも危ないのでリビングのソファーにいつも通りに座る。

　不思議なことにいつも通りに座ったら、いつもの番組が始まる時間に、電源を消失している筈のテレビの画面がついた。

　驚いて、でも、画面を見つめていると、画面の中のいつものコメンテーターが
「あ、今東京は停電中なんですね。失礼いたしました。」

　と、言うと、テレビはまた暗くなった。

ん？？？

　テレビの中には人が入っているの？

　電力で動いているんじゃないの？

　それきり停電が解消するまで二度とテレビはつかなかったけど、あの時一瞬だけ、黒い画面が急に白く光ってテレビがついた時の出来事を私は忘れることはできない。

　ただ、そういったことが起きたのは我が家だけではなかったらしく、テレビ界は今や宇宙人が操っているという根も葉もありそうな噂が、しばらくの間流れていた。

【了】