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二人は己の私利私欲のために涼む事を後回しにして、まずは稚貝のお裾分けを配達することにした。
……まずは一件目。
北見市泉町にある旧タマネギ倉庫を改装した建物郡。
それら全て、ひとつの会社が所有している大規模な拠点。
拠点のひとつとして営業している自動車修理工場、イーストフリーダム。
大きなシャッターを開け、洒落たJazyミュージックが小さな音量で流れる小粋な工場だ。
中はまるで、自分がアメリカに旅行でも来たのではないかと錯覚してしまうほどモダンで味のあるアメカジ雑貨が丁寧に飾られている。
その工場で一般の乗用車を整備作業していた一人の少女の姿があった。
大きな白い発泡スチロールの箱を抱えた地雷系ファッションの美女と夏服を着飾った18歳の少女の姿があれば誰もが気がつくだろう。
しかし、整備作業をしている銀髪の少女は二人が店内に入ってきても、素っ気ない声で
「いらっしゃいませー」とテキトーに挨拶を言って、チラッと目を向けただけで再び作業に戻る。
それにみかねて、夏海が銀髪の少女に一言もの申す。
「こら綾音! 無視しないでよ!
少しは私に構いなさい!」
「なーんだお客さんかと思えば夏海じゃん。
私バイト中なんだけど。忙しいんだけど。
何? 邪魔しに来たの? 用ないならお客さん紹介するか車もってきてお金落としていってよ」
キャスター車輪のついた作業テーブルにスパナと黒い手袋を置きながら、溜め息と悪態をつく露骨な物言いで不機嫌そうな銀髪の少女。
夏海の通う高校の同級生、風間 綾音である。
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