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結希に指を差し、腹を抱えてケラケラと笑う綾乃。
綾乃が笑う度に、段々と結希の表情が曇る。
「夏海、ちょっと待ってて。部屋からテニスラケット取ってくる」
瞳孔が開き、無表情で怒りのオーラを露にして振り返り、自室へ戻ろうとする結希の足に夏海がしがみついて制止する。
「待って待って待ってユキ!
綾乃の頭はボールじゃないから!!
ちょっと軽はずみな気持ちだったんだろうから、綾乃の事おおめに見てあげて!」
「ちょうど私、部活引退したばかりで運動不足だったし、体が鈍ってたのよ。
受験勉強ばっかりで疲れてたし、ストレス発散には綾乃さんと一緒にテニスするのが丁度良いんじゃないかって一瞬思ったのよね。
綾乃さんもテニスしたいでしょ?」
大人しい割に激しい剣幕を見せる結希の問いに、綾乃は子供のように無邪気に手をあげて答える。
「やりたいやりたい!
ユキちゃんとテニスしたい!
やろーやろー!」
「綾乃さんの頭がボールになるのと、その胸に二つ付いた大きなボールでテニスをするか、綾乃さんが的になって私のサーブ練習に付き合うか、どれか選んでください」
「ごめん。マジごめんって」
流石にふざけすぎたと、綾乃は先程の悪ノリと同じ姿勢で深く頭を下げたが、もうどれが綾乃の本心の謝罪なのか、ここにいる誰もが分からなくなっていた。
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