2人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
それは、綾乃の実家は紋別市。
実家が漁師を営んでおり、今はホタテの稚貝放流の時期であり、深夜から出掛けて帰りは早朝、下手すれば昼までアパートに帰ってこないのだ。
噂をすれば何とやら。
「ただいまー!」
特殊部隊員が人質を取って立て籠った現場の扉を蹴破る如く、綾乃が防水ツナギ姿で白い発泡スチロールを抱えて勢いよく帰宅。
「何時だと思ってるの! 遅いわよ!
もう朝の10時よ!? 私、朝ごはん食べてないんだから!」
肉体労働で疲れて帰ってきている筈なのに、早々から悪態をつく夏海。
「って臭ぁ!! 綾乃、稚貝の仕事終わったらすぐにツナギ脱ぎなさいよ!!
海水だらけでビチャビチャじゃん!!」
よく見ると綾乃のツナギは海水で濡れて滴り、潮の匂いが部屋に充満する。
「ごめんごめん、夏海。
もう何連勤か忘れちゃったくらい忙しくて疲れてるから、寝惚けて着替えるの忘れてたしょや。すぐ着替えるから待っててや」
最初のコメントを投稿しよう!