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綾乃は玄関でツナギを脱ぎ、脱いだそれを洗濯機に放り込む。
そんな時、不意に夏海の腹がなった。
「夏海、昨日の夜も言ったけど、パンあるし冷蔵庫にバターとかジャムとかあるから朝それ食べてって言ったっしょや~。
もー、言うこと聞かないんだからー」
呆れつつも綾乃は白い箱を塞いでいるビニールを剥がし、蓋を開く。
「綾乃、何それ?」
「ああ、これ? 夏海の朝ごはん持ってきたよ」
「えっ、マジで? 見せて!」
豪勢な朝食を期待した夏海が起き上がり、子供のようにドタドタと狭い室内を駆け、「痛っ!!」とテーブルの角に脛をぶつけて転がり、踠く。
「大丈夫?
走ったら音響いて近隣に迷惑かかるし怪我するよ?
まったく子供なんだから。
はい、どーぞ」
そう言って綾乃から手渡された物は、氷でよく冷やされてビニール袋に入れられたホタテの稚貝。
しかも活きが良いから微かに殻を開閉して動いてる。
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