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四葉は喫茶店の奥に引っ込むと、琥珀色のアイスティーが乗ったお盆を持ってやってきた。
「暑いでしょ。これ、飲んでよ」
「わぁ、ありがと」
私たちはお客さん用の真っ白な椅子に座り、アイスティーを飲みながら庭を眺めた。
ストローでグラスに入った液体をかき混ぜるとからからと氷が鳴るのが涼しげだった。ミントの清涼感のある香りが風に乗って運ばれてくると、私はつかの間暑さを忘れるような気がする。
「じいちゃん、この庭が残ってるの見たら喜んでくれるよね」
と四葉が呟いた。
「そうだよ!四葉も忙しいのに頑張って庭の管理してくれるじゃん?きっと嬉しいよ」
「俺、小さいころからこの場所が大好きなんだ。いつもハーブのすーっとする香りがして、綺麗で、コーヒーの香ばしい匂いがして…。じいちゃんが大事にしてるってよくわかる場所だから」
庭を眺める四葉の横顔に風が吹き、前髪がさらさらと揺れた。白、薄紫、黄緑、黄色の植物の群れが色とりどりに風に靡く。
私もその言葉を聞いてくすぐったいような気分になった。
「私、来週もここにくるよ」
「え、ほんとに?いいの?」
「うん、私もこの場所すごく好きだもん。綺麗で居続けられるように手伝う」
四葉はそれを聞くと、満面の笑顔を浮かべた。
「ありがとう!文ちゃん。…ここは、俺にとっても大切な場所なんだ。だからずっとこのままでいてほしいよ」
四葉はそういって微笑むと風で運ばれるハーブの香りを胸一杯に吸い込む。そのまなざしから四葉がこの場所を愛しているということが伝わってきて、私も心が明るくなるような気がした。
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