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私は、変わり果てた箱庭の姿を見て、呆然とした。
カモミールやラベンダーは根っこから無残に引きちぎられ、ミントは土ごと掘り返されている。
むき出しの地面と、千切れたハーブが足で踏みしめられ、緑が美しかった地面はどろどろになっていた。真っ白だったテーブルと椅子は蹴り飛ばされ、地面に横倒しになって土で汚れている。
この場所から生命というものは感じられない。まるで、庭が死んでしまったかのようだ。
四葉はテーブルを持ち上げて、元の姿に戻そうとしていた。
「文ちゃん」
その声には覇気がなく、目元は赤く腫れている。
「昔、喫茶店をひいきにしてくれてた近所の人から、日曜日に庭に誰かがいたって連絡があって、心配で様子を見に来たんだ。そうしたらこうなってた」
私はテーブルの足元にたばこの吸い殻が落ちているのを見付けて、全身の血が逆流しそうになった。
「(あの3人組だ)」
四葉に、正しさを主張することがいいことじゃないと言われていたのに。私が、正義感を振りかざして3人組を論破しようとしたせいで、庭はめちゃくちゃになってしまった。私のせいだ。私のせいで、四葉の大切なものを壊してしまった…。
私の胸に、荒波のように罪悪感と後悔が押し寄せてきた。
私の目頭が熱くなり、気づいたら目尻から涙が流れていた。
私はその場に立っていることがいたたまれなくなった。動悸がし、手のひらにはじんわりと汗をかきはじめる。重苦しい感情が心の内を支配して、私は逃げ出してしまいたい、と思った。
「文ちゃんも片付けるの手伝ってくれる?」
と四葉が呟いた。
私はその声を聞きながら、四葉に背を向け駆け出していた。全速力で逃げ出しながら、四葉の声が私を追いかけてこないことにほっとしている自分がいた。
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