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 昔から知っている少年だったから、その成長を真には飲み込めず、油断してしまった。  いざとなれば抗えるのだと、逃げられるのだと、思い込んでいた。  だが、自分と同じくらいに身長が伸び、自分以上に筋力をつけた――今、目の前にいるカイネは、もはや子供ではない。 「男」だ。  雄として立派に成熟した彼に、自分が敵うはずもない――。  カイネはあっさり下着を抜き取ると、リイリアの膝裏を掴み、手前に引いた。 「あっ!?」  リイリアはバランスを崩し、ころんと後ろに倒れた。その尻の下に、正座をするような格好をしたカイネが、自身の太ももを素早く差し入れる。リイリアの腰を膝に乗せると、彼女の足を大きく開き、恥部を丸見えにした。 「やっ、いやあ……っ!」  ――ご開帳。とんでもない痴態を晒す羽目になったリイリアはひどく動揺し、だがなすすべもなく、手で顔を覆うしかなかった。  カイネは明るくはしゃいでいる。 「わあ~! こんな風になってるんだね! 女の人の――」 「……っ!」  おまんこ、と囁くように言われて、リイリアの体はますます熱くなった。  カイネはニヤニヤ笑いながら、リイリアの股間に縦に刻まれている裂け目を指で開いた。  初めて人前で暴かれた性器にスッと空気が当たり、リイリアはぶるっと震えた。 「な、なにしてるの!?」 「なにって、観察しているんだよ」 「かんさつ……!?」  恥ずかしさよりも、不安が勝った。頭が腰より下にある不自由な体勢ながらもなんとか確かめると、カイネが陰部に顔を近づけている。  自分の恥ずかしい場所に重なる、カイネの愛らしい顔――。  こんなのは変だ。おかしい。  だがリイリアは、その異様な光景から、なぜか目が離せなかった。 「やめて……! やめなさい!」  カイネはわずかに顎を上げると、リイリアが見たこともないような冷笑を浮かべた。 「ねえ、お姉ちゃん。女の人のあそこって、こんな風にいつもヌルヌルしてるの?」 「そ、それは……」  カイネに体をいじられたせいで、感じてしまったからなどとは、到底言えない。  黙り込むリイリアとまっすぐ目を合わせながら、カイネは花弁をぺろりと舐め上げた。 「やっ!? カイネ、やめて……!」 「せっかくの機会だから、よく勉強しておかないと。味や、さわり心地や……。どうやったら女の人が悦んでくれるのかをね……」  膣穴の中――。今までなにをも受け入れず、だから意識したこともなかったような箇所に、ぬめった柔らかい舌が入り込んでくる。カイネがそれを動かすたび、リイリアの腹の奥はきゅんきゅんと疼いた。やがて奥からじわりと、淫らな汁が垂れてくる。 「あっ……はぁ、ん……っ」 「美味しいよ、お姉ちゃん」  からかうように言いながら、カイネはわざとじゅるじゅる音を立て、リイリアの愛液を啜った。 「や、やあ……っ! カイネ、いや……っ!」  羞恥と未知の感覚が混ざり合い、頭に血が上る。ぼうっとするのに、カイネが構う股間だけは感覚が鋭敏になっていた。  ねちねちと膣口をほじられ、だがそれだけでは足りない。じれったく思い始めたそのとき、カイネの指先がリイリアの陰核に触れた。 「ひゃっ……!?」  電流が走ったかのように、全身が震える。リイリアのその反応を見て、カイネは口角を上げた。 「やっぱりここは、処女でも感じるんだ」 「な、に……?」 「大丈夫だよ、お姉ちゃん。怖がらないで。気持ち良くしてあげるから……」  性器の内側、肉ヒダを舐められながら、クリトリスを擦られる。  体中が、そして脳みそも痺れてしまって、なにも考えられなくなってくる。  ただ、気持ちがいい……。 「やっ、やっ、あ……! んんっ」  自分の甘ったるい声が嫌で、リイリアは懸命に唇を噛んだ。 「我慢することないのに。ここから母屋は離れているし、お姉ちゃんのいやらしい素敵な声は、誰にも聞こえないよ。――僕以外には」 「や、だ……っ!」  そのカイネに聞かれるのが、嫌なのではないか。  五つも年下の、弟のように思っていた少年に、こんな情けない嬌声など聞かせたくない。  ――肉欲に溺れる淫らな女だと、思われたくない。  だがリイリアの頑なな態度は、かえってカイネを煽ったようだ。 「お姉ちゃんてこんなエッチな体をしてるのに、恥ずかしがり屋さんなんだね。思ってたより、ずっとそそる……」  そう言って舌なめずりをする――カイネはもうすっかり、一人前の男の顔つきになっていた。  いや、違う。もともとそうだ。カイネは「雄」だったのだ。  子供の仮面をかぶり、無邪気な生きものを演じていただけ――。 「もっと鳴け。そして余を楽しませよ」  カイネはリイリアの性器から溢れ出る蜜を舌ですくいながら、花芯を指の腹で撫でた。空いた手は胸へ伸ばし、空気に触れるだけで尖ってしまう乳首をつまみ上げた。 「あっ、ああああっ、やああっ……!」  限界だ。掠れた悲鳴を上げながら、リイリアは達してしまう。 「お疲れさま。――可愛かったよ、お姉ちゃん」 「は、あ……っ」  荒い息をつき、ぐったりと横たわるリイリアから離れると、カイネはテキパキと衣服を脱ぎ始めた。  上等な服の下から、歳の割には厚い胸板と割れた腹筋が現れる。その様をぼんやりと眺めていたリイリアは、突如目を見張った。  カイネがズボンと下着を一息に下ろした、そのとき。とてつもなく大きなものが、ぶるりと揺れながら飛び出したのだ。 「…………!?」  リイリアは、天を指す赤黒いそれを凝視した。  セックスがどういう行為なのかは、いくらなんでも知っている。  男性器と女性器を繋げ合う。そして男性が子宮めがけて精子を放てば、子供ができるのだ。  しかし逆に言えばリイリアが知っているのはそれだけで、実際のナニをどのようにどうするかは分からない。  ――つまり彼女は、異性の性器を見るのは初めてだったのだ。 「カイネ、それって。それって……」  勢い良く飛び起き、リイリアはそそり立った男根を、食い入るように見詰めた。  カイネのそれは、彼女が丹精込めて育てている、畑の茄子よりも太い。血管の浮き出たたくましい幹の、上部はくびれており、その先はエラの張った出っ張りがついている。そして根本には、重たそうな袋がぶら下がっているのだった。  処女であるリイリアには比べようもないことだが、カイネのペニスは長さも太さも、世の平均を大きく上回る逸品である。その威容たるや、そこいらの成人男性が裸足で逃げ出すレベルだ。 「ツノみたいだわ……。いったいどうなってるの……? 本当に人の体の一部なの?」 「――そなたは可愛いな」  初めて目にする不思議な物体に釘づけになり、リイリアは失礼とも取れる感想を口にする。しかしカイネは愉快そうに笑いながら、見せつけるように自身を掴んだ。 「これはそなたを天国へ導く道具よ。ただし、そこへ至るまでには、地獄の門をくぐって貰わねばならぬがな」 「え?」  カイネの言葉遣いが、がらりと変化している。どうにも偉そうというか、時代がかっているというか……。最近の子供たちの間では、そういった喋り方が流行っているのだろうか。それに声質も、一オクターブほど低くなっていた。 「裏声を使うのも疲れた。幼子(おさなご)のふりもな」  言いながらカイネは、凝りをほぐすように首と肩を回した。 「カイネ……?」  改めてその顔を確かめてみれば、美しく整った目も鼻も形こそ変わりないが、そこに浮かぶ勝ち気で不遜にも見える表情は、知らない誰かのようだった。 「あなたは……」  ――あなたは、誰?  母親の面影を自分に見ているなんて、きっと嘘だ。  ではなんのために、こんなことをするのか。  諸々尋ねようとしたリイリアは、その矢先、再び押し倒された。  大きく開かされた足の間にカイネが収まり、先ほど散々舌と指でいじめられたそこに、固いものが当たる。 「あっ! ちょ、ちょっと待って……!」 「力を抜いているのだぞ」  抵抗する間もない、早技だった。  ツノと見間違えたほど雄々しく反り返った肉の棒が、内側に押し入ったかと思うと、次の瞬間には先端が奥へ到達する。 「いたっ、いたあああい!!!!」  一息に貫かれた痛みと、腹の内側を塞がれた圧迫感に苦しみ、リイリアは絶叫する。  カイネは熱っぽい吐息をついた。 「いいぞ、リイリア。素晴らしい……。そなたの持ちものは、想像以上だ……」  うわ言のようにつぶやくと、カイネは腰をガツガツと突き入れた。 「やっ、痛っ、いたい!」  怒りに任せてリイリアがぽかぽかと殴りつけると、カイネはやっと動きを止めてくれた。 「むう、すまぬ……。あまりに心地良くてな」 「ひどいよ、カイネ……!」  目に涙をためて睨んでも、カイネは動じず、淡々と応じた。 「最初に痛むのは仕方のないことよ。女体の仕組みであって、余のせいではない。だから先ほど『地獄の門をくぐってもらう』と、言ったではないか」 「そうじゃなくて……!」  痛い目に遭わされたのも頭にくるが、それ以上に業腹なのは、なんの断りもなく犯されたことだ。  純潔を奪われてしまった――。  繋がった箇所が、ふてぶてしいカイネの存在そのものを主張するかのように、ズキズキ痛む。 「まあ、許せ。もっと時間をかけるつもりだったのだが、そなたは明日旅立つと聞いたのでな。今日中に、話をまとめておく必要があったのだ」 「話? なんの?」  きょとんと丸くなったリイリアの瞳の前で、カイネは真顔になった。 「そなたに、余の伴侶となって欲しいのだ」 「えっ……」
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