猫を飼う

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 友達が最近飼い始めた茶トラの保護猫の写真を見せてくれる。  おばあちゃんが飼っていた猫が中学生の時に死んでしまい、その頃から猫を飼いたがっていたがお母さんが許してくれなかったらしい。  お母さんに「猫に限らず動物を飼うのはその命を預かることだから、自分の行動が制限されることがあるけどそれでも飼えるのか。猫の寿命はだいたい十五年。旅行なども行けなくなるし、付き合う人がアレルギーだったら付き合いに影響があるかもしれないし、そんな人と結婚となれば猫をどうするのか。飼えないから実家に置いていくなどはやめなさい」などと色々言われていたが、猫が寿命で死ぬまで絶対に手放さないと宣言してやっと飼えたと友達は嬉しそうだ。  友達のお母さんの話を聞いてずいぶんと厳しいこと言うなあと思ったが、でも本当はそれくらいよく考えなければいけないことかもしれないとも思った。  スマホで何十枚も撮ったらしい茶トラのとらちゃんの可愛い写真に癒される。でも、可愛くても運が悪ければ殺処分されていたんだよな、などと考えながら見ていると……。 「あれ? 今の何?」 「え、どうしたの?」  友達が一枚前の写真に戻ってくれる。とらちゃんがテーブルの下にいる写真だ。テーブルの影にいるので少し暗くなっているがちゃんととらちゃんに見える。でもさっきはとらちゃんが真っ黒に見えた。茶トラが黒猫に見えた。でも今改めてよく見ると、とらちゃんは茶トラのまま。  撮った写真を見せてもらったが黒く見えた写真は一枚もなかった。あんなにはっきりと見えたのが、気味が悪かった。  黒猫は縁起が悪いなんて迷信だと思う。でも、黒く見えたのが嫌だった。      なぜ黒く見えたのかネットで調べたがわからない。一つだけ引っかかる記事を見つけた。自分の体調や精神状態で波長があってしまい、見えないものが見えてしまうことがある。とそこには書いてあった。  それからは写真を見せてもらっても何事もなかった。何事もないまま私たちは大学生になった。  相変わらずとらちゃんの写真を見せてもらって癒されているが、最近友達は悩んでいる。サークルの先輩とちょっといい感じになりそうなのだが、その先輩はアレルギー持ちだった。  彼女が悩んでる間、その先輩は交通事故で亡くなってしまった。家族四人で帰省する途中で事故に遭い、彼のお父さんと妹さんは怪我だけで済んだが、彼と彼のお母さんが亡くなってしまった。  その話を友達から聞いた時、浮かんだのは黒くなったとらちゃんだった。もしかしてとらちゃんがなんかした? 彼のお母さんも……。などと浮かんだ考えを消す。今更考えても仕方がないことだ。  私は動物を飼わない。スマホで見てるだけで満足しよう。  ……あなたもそうした方がいいよ。
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