22人が本棚に入れています
本棚に追加
「鏡よ鏡、私の心は壊れそう。誰かが私の命を狙ってる。朝に晩に、扉の外をうろつく恐ろしい化け物がいるのよ!」
「なんと恐ろしい。では私が扉を見張りましょう。怪物の足音が聞こえたらどうかお尋ねください。私が正体を見極めましょう」
「なんて頼もしい。誰も私の恐怖を聞いてくれなかった。みんなそんなの妄想だって言うの。鏡よ鏡、あなただけよ。私の心を救ってくれるのは」
鏡はただ静かに、姫の姿を映していた。
鏡がある。
それだけで今日は少しばかり気分がいい。
私の鉛のように重くて黒い心も、あの鏡が少しだけ軽くしてくれる。
カツ カツ カツ……
コン コン コン……
「鏡! 鏡! 化け物よ! 私を食べに来たんだわ!」
「姫よ、勇気を持って扉を開けて下さい。そして姫は私が映す化け物をご覧ください。もし本当に怪物ならば、私の魔法の力で鏡に閉じ込めましょう。人間の姿であれば、何も心配することはありません。それはただの使用人です」
「分かったわ。怖いけど、私あなたのことは信じているの」
姫は扉を睨みつける。
恐ろしい魔王を迎えるかのように扉を開くと、すぐに鏡の中を見た。
そこに映るは食事を持った使用人。
鏡を前にしても苦しむ様子もなく、驚いた顔で立っている。
「鏡よ、化け物じゃなかったわ。よかった。あなたがいれば正体が分かる。化け物がいても何も怖くないわ!」
最初のコメントを投稿しよう!