姫と黒い鏡

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「鏡よ鏡、私の心は壊れそう。誰かが私の命を狙ってる。朝に晩に、扉の外をうろつく恐ろしい化け物がいるのよ!」 「なんと恐ろしい。では私が扉を見張りましょう。怪物の足音が聞こえたらどうかお尋ねください。私が正体を見極めましょう」 「なんて頼もしい。誰も私の恐怖を聞いてくれなかった。みんなそんなの妄想だって言うの。鏡よ鏡、あなただけよ。私の心を救ってくれるのは」  鏡はただ静かに、姫の姿を映していた。  鏡がある。  それだけで今日は少しばかり気分がいい。  私の鉛のように重くて黒い心も、あの鏡が少しだけ軽くしてくれる。   カツ カツ カツ…… コン コン コン…… 「鏡! 鏡! 化け物よ! 私を食べに来たんだわ!」 「姫よ、勇気を持って扉を開けて下さい。そして姫は私が映す化け物をご覧ください。もし本当に怪物ならば、私の魔法の力で鏡に閉じ込めましょう。人間の姿であれば、何も心配することはありません。それはただの使用人です」 「分かったわ。怖いけど、私あなたのことは信じているの」  姫は扉を睨みつける。  恐ろしい魔王を迎えるかのように扉を開くと、すぐに鏡の中を見た。  そこに映るは食事を持った使用人。  鏡を前にしても苦しむ様子もなく、驚いた顔で立っている。 「鏡よ、化け物じゃなかったわ。よかった。あなたがいれば正体が分かる。化け物がいても何も怖くないわ!」
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