姫と黒い鏡

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 鏡との生活がまた始まる。  翌朝も姫は目覚めると、すぐに鏡の元へと向かった。 「鏡よ鏡、窓の外に誰かがいるの。私をあの竜の元に連れて行くんだわ」 「なんと恐ろしい。私が追い返して差し上げましょう。勇気を出してカーテンを開けて下さい。正体を見られることを恐れた使いは、すぐさま飛び去り逃げるでしょう」  姫は恐ろしい竜の使いを追い払いたくて、決死の思いでカーテンを開けた。  小鳥の形をした生き物が三羽、鏡を恐れて飛び去った。  姫は鏡の魔法に満足した。  この鏡なら、きっと悲しい死だって追い払うかもしれない。  翌朝姫は、庭木の花を指差して言った。 「鏡よ鏡。どうして命は散ってしまうの。あの椿が落ちた時、きっと私の命も尽きるんだわ」 「なんと恐ろしい。姫よ、生き抜くために、どうか少しだけ勇気をお出しください。私の前に一晩、水を入れた水差しを置いてください。そして明日の朝、一晩私が魔力を込めた水を椿に振りかけるのです。花が落ちてしまう代わりに、新しい命を木に芽吹かせてみせましょう」  翌朝姫は、言われた通りに水をやった。  久々の外は光が眩しく、姫は体を焼かれてしまうような気がした。  勇気を振り絞り、水差しの水は無くなった。 「鏡よ聞いて、私やったわ! 水をあげたのよ! でも光が私を焼き尽くそうとするの。怖くて外には出られないわ!」 「姫よ、まずは水やり、よくぞ達成されました。そして姫、なんと外は恐ろしいのでしょう。ですが光に打ち勝つ方法はなくもありません」 「それはなあに?」 「今度は一晩、私の前にショールを置いて下さい。姫の体を強烈な光線から守る魔法を込めて差し上げましょう」
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