旧友たち

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「僕の見立てでは、彼は壊れてしまったわけじゃない。頭のネジが外れているだけなんだ……本当の意味で」 「……その言葉に本当の意味があるなんて知りませんでした」 「あっはは! さすが剱崎くん! 素晴らしいツッコミだ!」  しばし笑い転げたキーラは、雄士に白い目で見られていることにようやく気がつくと、「ごほん」と咳払いして色を正した。 「彼の脳を透視したんだけど、やはり以前とは違った。重要な部分が少しずつ切除されていて、しかも人の脳としてのバランスがあえて崩されている。あんな風になるのは当然だよ」 「……いったい誰がそんなことを?」  雄士がぞっとした様子で尋ねると、キーラは沈んだ表情でゆっくりと首を横に振る。 「誰でもない……やったのは彼自身だ。彼は何らかの理由で、正気ではいられなくなった。だから自分の手で自分の脳をいじったんだ……そこまでは彼の記憶から探り出せたけど、肝心の『理由』の部分は混濁していてわからなかった。もう本人から聞き出すしかない」  雄士とキーラの会話をじっと聞いていた賢人は、くだらないとばかりに鼻で笑って言う。   「どうやって聞き出すんですか? あんなイカれた奴から」 「簡単さ。彼がいじった部分をもう一度吹き飛ばしてしまえば、あとは再生を待つだけだ」 「……」 「……」  雄士と賢人に白い目を向けられた上、イリヤのため息までも耳に入り、キーラはきょとんとする。 「……え? だってそれしか方法がないじゃないか?」 「ええ、頭では理解しているのですが……憐れです」  率直な感想を口にした雄士に、キーラはなおもきょとんとした表情で応じる。 「そう言うけど、頭を吹き飛ばされるよりも腹部を貫かれる方がずっと痛いよ? 痛覚生きてるから」 「それは仕方がありません。当然の報いですから」 「うん……まぁそうだね」  いまいち理解し難いという顔をしながらも雄士に話を合わせたキーラは、改めてイリヤ達の方に視線を落とす。 「きみ達にとってはやりきれないだろうけど、今はどうか我慢して欲しい。エリーはSTIにとって重要な人物だし、人質として生きていてもらわないと困るんだ」 「素直に助けたいって言いなよ。大事な弟でしょ?」  キーラの申し出を少しも意外には思わなかった様子で、イリヤは穏やかに言った。  途端にどこか居心地が悪そうな表情を浮かべたキーラは、イリヤからすっと視線をそらす。
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