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03
社の中は和風の外観だけれど洋風の室内は自然光が入って来るのに、雨のせいで室内は影を落としていた。
私は初めて来たよう知らない場所に来たような錯覚に陥っていると、後ろにいたエルシィが社の扉を閉める音に正常な意識を取り戻しながら振り向くと、エルシィは無理矢理に笑顔を作って私に言った。
「そんな所に立たれたら入れないでしょ」
「ご、ごめんなさい」
私は数歩前へと室内へ入ると、エルシィはその隙間を縫うように室内へゆっくりと入り、部屋隅にかけられていた篭を広げとタオルを引き始めた。
「紬、ドーラを」
「はい」
エルシィは手を広げながらドーラを優しく何処か不器用に受け取った。
「ふふ、軽いね」
その言葉が何を意味しているのかは私には分からなかったが、何処か懐かしくも優しい微笑みを浮かべていたが、
急にドーラを撫でながら見つめていたエルシィの顔が私へと向けられた。
「髪乾かさないと……」
脈絡ない言葉に何を言われたのか私は聞き返した。
「髪ですか?」
「紬、このままだと風邪ひいちゃう」
エルシィに言われ私は無意識に自身の髪に触れ気付く、私はドーラの事で頭が一杯だったらしく雨が降る中に居た事をすっかり忘れていた。
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