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「『ドーラの家も同じ方向』と言った」
「どーら?」
「ん」
女の子は力強くキョトンとした顔を見せながら山に向けていた指を自身に向ける。
「あなたドーラって言うの?」
「言ってなかったか?」
私が呆気にとられながら頷くと女の子もといドーラがケタケタと笑いながら私の手を引き歩き出した。
全身擬態と言うだけあって、その手はやっぱり水風船のようにブヨブヨしているのに程よく暖かい。例えるならゴム製の湯たんぽのようだ。
「まずはお前さんの現状を詳しく知る為に”奴”に見て貰おう」
「やつ?」
私が言葉に出すと同時に直ぐに思い出す。きっと昨日ドーラと一緒にいた人だ。
「何をしている人なの?」
「あーんー……」
私が”奴”と称された人の事をきくとドーラの口が重くなり不安が一気に押し寄せた。
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