見える子と魔女と■

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 エルシィは困っている私にじっくりと見つめた後、真剣な顔で私に言った。 「……ねえ、呪いを解く代わりに2つお願い有るんだけれど聞いてくれる?」 「2つ?」 「ええ、1つ目は呪いを解くまで、私の手伝い」 「手伝い。私に出来る事あるんですか?」 「うん。決して危なくないから、その辺りは安心して」 「……どんなことか聞いて良いですか?」    今日という非科学的で日常からかけ離れた出来事に、これ以上怖い思いをしたくないと私は身構えながらエルシィに聞くと優しく答えてくれた。 「主にお菓子作りの手伝いとお使い」 「お菓子作りの手伝いとお使い?」  私の命の代償がお菓子作りとお使いで賄えられると聞かされ、私の価値はそんなものなのかと小さなプライドが消し去る。 「解呪(かいじゅ)。あ、呪いを解く事ね。私は解呪をするのに手が離せなくなるから、お菓子を作るのを手伝ってほしいの」 「私、お菓子なんて作ったことないです!」  落ち込んでいる最中でも話が勝手に進んでいき、私は慌てて役に立てないと言ったが、エルシィは小さく笑い言った。 「紬、私の話を聞いてた?”お菓子作りの手伝い”だって」 「あ」 「ふふ、私の変わりに作るのはドーラだから繊細な作業も必要のないから安心して」 「え?ドーラがお菓子作れるんですか?」 「何か問題でも?」  私がドーラが作れることに疑問の声を上げると、すぐさまドーラは否定した。 「エルシィが出来てドーラが出来ないことはない!」 「まあドーラは息込んでいるけれど、疲れやすいから手伝ってほしいの」  なるほど、人に紛れる為に義体化して町に出たり、結界の中へ入ったりすれば、疲れたりもするだろう。 「分かりました。手伝わせてください」 「ふふ、良い返事。ドーラ良いわよね?」 「ドーラ一匹で出来る!」 「はいはい、確りと教えてあげてね」  エルシィはドーラの機嫌を取るかのように、お菓子をまた口の中へと投げ込む。 それを美味しそうに黙って食べ姿は、種族は違えど何処か姉弟ように見え微笑ましい。 「ドーラとお菓子作り。想像できないなー」 「ふふ、器用だから驚くわよ」 「ドーラそうなの?」 「腰抜かせ」 「その言葉だけ聞くと物騒」 「ふふ、ドーラ。楽しくなりそうね」  エルシィがドーラを優しく見守る姿に、私は出来る事を自分なりにお手伝いをしようと決めたと同時にエルシィに聞いた。 「エルシィさん1つ目のお願いは分かりました。最後の、2つ目のお願いを教えてください」  私の言葉にドーラを優しく見守っていた表情を変え微笑んだ言った。 「最後、その呪い私にくれない?」  想像もしてない言葉に私は理解できずに、微笑んでいるエルシィを見続ける事しかできなかった。
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