見える子と魔女と■

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08  実感のない話に呆然とする中で、部屋の外から差してきたオレンジ色の光がエルシィの顔を映し出し夕方になっていると私は気づき慌てた。  入学式の終了に合わせてお昼には帰ると叔母さんに伝えていたことすっかり忘れていた事を思い出したとエルシィに伝えると、エルシィは笑いながら、返事は次で良いと言われた。  私はお茶のお礼もそこそこに、慌てて社から飛び出し家へ山を駆け出そうとした時。  社の中からドーラがフワフワと浮いて追いかけるように来た。  フワフワ浮いている事に驚くよりも、早く家に帰らなければ言う使命感に頭が働かない私はドーラに「忘れ物してた?」と聞くと「近道がある」と道案内をすると先頭に立ち、「山で慌てると転ぶだけじゃすまないから、まず落ち着け」と諭され私は大きく深呼吸をしドーラの後ろをゆっくりと着いていくと、ようやく私は落ち着きを取り戻し、エルシィに聞きそびれた事をドーラに聞いた。 「ねえドーラ、ほんとうに良いのかな?」 「なにがだ?」 「呪いを解く、解呪(かいじゅ)?してくれる見返りが、呪いを解くまでエルシィさんの手伝いと、私についている呪いをエルシィさんに受け渡すだけで、ほんとうに良いの?」 「いいよ!」 「そんな簡単に言うのね」 「はは、呪いは使いようで、何に使うかが問題なんだ。それ自体が悪いわけじゃないからな」 「だからって、そんなものを欲しがるなんて」 「使いようだと言ったろ。それ自体が魔力(ちから)なんだ。だから、ドーラ達は(ほっ)している」 「ドーラは魔力欲しいの?」 「ドーラ達は魔力の絶対量が決まっているから、補充する必要がある」 「補充……」 「何もしなくとも魔力は減る。……食事だと思ってくれ」 「何となく納得した」 「そうか、それはよかった。さて、もうすぐ道に出るぞ」  社まで上ってきた時間よりもはるかに短い時間で降りられたことに驚きながら舗装されている道まで出た。 「山を抜ければ危険な事は無いだろうが、1人で帰れるか?」 「ふふ、ドーラ心配し過ぎだよ」 「呪われている子だからな、何が起きるか分からんから心配もするだろ」 「ぅ」  ドーラの言葉に反論が出来ず、声にならない声を上げてしまう。そんな私を見てドーラは笑いながらフワフワと近づいて「手をだせ」と言われるがままに、私は浮いているドーラに手を差し出した。 「これを持ってけ」 「鈴?」  ドーラから銀色をしたとても小さい紅白の紐が通された鈴だった。
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