見える子と魔女と■

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「うん、魔除けだと思って身に着けておけ。これくらいならバッグに下げていても目立たないし困らんだろ?」 「……」 「どうした?邪魔か、カッコ悪いか?」 「ううん、……あのね。知り合ったばかりなのに、色々してくれてありがとう」  私の事なんて何も知らないのに、こんなにも親身になってくれたことに対してお礼の言葉を自然と伝えていた。 「はは、まだ解けても無いんだ。その言葉は解けてからにしておけ」 「うん。でも、ありがとう」 「ドーラの名において、お前さんを一端(いっぱし)の人に戻してやると誓ってやるから、安心しな」 「ふふ、頼もしいね。ドーラ」 「じゃ。またな」  私は微笑むドーラに別れを告げ、私は家まで自転車を押し歩く。  帰り道で私は今日一日で起きた事を思い起こしていた。  義体化できる生き物、魔法がつかえる人、そして呪い。  今まで見える程度だったのに、こうも非現実的非日常な出来事を目の当たりにして、頭の中は整理がつかないまま、何度も足を止めては空を見上げ考えては歩みを進めるを繰り返した先に、住んでいる家の玄関先が見え違和感に気づいた。  それは叔母がスマートフォンを持って玄関先で何をするでもなく立ち尽くしていたからだ。  私が家に近づくにつれ、叔母は肩に力が入っていたのだろうか肩が数センチ下がるのを見て私は何か有ったのかと叔母に聞くと、叔母は安心した顔を見せながら怖い事を聞かされた。  今朝、私から入学式で昼には帰ると聞かされていたから、夕方になっても連絡ないから日が落ちたら捜索願をだそうかと真剣に悩んで待っていたと言われ、私はもう数分遅かったら警察に連絡され何をしていたかなんて事情徴収をされたらと想像しただけでも、背中の冷や汗が止まらない。  私はとっさに入学式で友達になった子と話していたらこんな時間になったと嘘をつくと、叔母は今度から遅くなる時は連絡してと柔らかい笑顔で言われ、私は嘘をついた事に後悔した。 「遅くなったけれど紬ちゃん」 「はい?」 「入学おめでとう」 「……ありがとうございます」  私がお礼の言葉を躊躇(ためら)ったのではなく、今日、入学した事をすっかり忘れ、思い出すまでのタイムラグは誰にも言えない出来事が詰まっていたからだ。  
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