3人の魔法使い見習

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3人の魔法使い見習

00  入学式が終わり1週間が慌ただしく過ぎ去り、気が付けば4月の中旬。  長い長い授業とSHRの話を聞き終えた私は、あくびと共に背もたれを後ろへ倒すようにストレッチをしていると後ろから声を掛けられた。 「はは、紬ちゃん。大きなあくびだねぇ」 「授業長いんだもん。碧は眠くならないの?」 「私はそれ程でもないかな」 「そう、うらやましいけどさ。何で私の手を握ってるの?」 「え?あ、目の前にあったから。つい」  あの言霊の件で碧と仲良くなって一つ困っている事が有る。  碧は親しくなるにつれ距離が近づき無意識に手や腕をを触ってくる。  ドーラのように柔らかいわけでもエルシィのように美人でもない私に、ベタベタ触られる側になった事が無い私は複雑だけれど、ここで雑な態度をとってまた言霊を送り込まれてドーラに助けを請わない程度にはやり過ごす術を身につけないととは思っているが、まだその術を知らず言ったそばから碧は私の手をニギニギし続けている。 「ねえ、そろそろ放してもらえないかな?背筋が辛い」 「背筋?」 「今の体勢、引っ張られているのと変わらないから、背中つりそう」 「ごめん!」  私の背筋の訴えを聞い入れて貰い私はようやくと姿勢を戻しながら、帰りの支度を始める。 「ねえ紬ちゃんはこの後はどうしているの?」 「今日は……バイト」  口元ではエルシィの手伝いと言いそうになったが、直ぐに口を紡ぎバイトと答えた。  どう説明するかも悩むしエルシィの素性を聞かれても答え辛い事と思い、手伝いをバイトと言い換えた。 「バイトかぁ……」 「碧はバイトとかはしないの?」 「え、あ、うん……親からバイトは禁止言われているんだ」 「そっか」 「でも高校生になったから、なにかやりたいなぁ」 「焦らなくてもきっと見つかるよ」 「そうかな?」 「そうだよ。じゃあ私、先に帰るね」 「バイバイ、また明日ね」  私は手を振りながら教室を出て社へと向かった。
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