3人の魔法使い見習

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03  山を下りる手前、手を伸ばせば結界の途切れる場所へとやってきた。  普段ただ通り過ぎる場所だけあってか、話をする場所ではないが人が来れば気付くし、社からは聞こえない場所だ。 「ここで良いかな?」 「はい……」 「?」  私に聞きたい事が有ると言われ良いよと軽々しく答えたが、一体何を聞かれるのかと内心気が気でない状態なのに、アルスは口ごもってしまい一向に話を始めない。 「あの、名前を教えてもらえますか」 「え?あ!」  そう言えば会うなり警戒され杖を向けられ挨拶もそこそこで終わっていた事に気づき、私は慌てて自身の名前を伝えると、アルスは被っていたフード脱ぎ深々と頭を下げながら言った。 「Aの名を先ほど受け継ぎました。魔法使いAの末柄。アルス・A・リアといいます」 「さきほど?」 「はい。ドラゴン様を封印するのが継承の儀式でもあるので」 「あー……」  そう言えばエルシィに聞かされたような気がするが、封印と言う言葉の強さに掻き消されていたようだ。 「ん?今なんて?」 「え、ドラゴン様の封印をして継承の儀式と」 「!」  アルスの口からドーラをドラゴン様という言葉に私は吹き出しそうになり息を吸い込みどうにか耐えることができた。  ドーラの普段の姿がポップすぎて、様と付けられているなんだか可笑しく私はまた笑いがこみ上げ、足に力を加え笑うのを必死に堪えながらアルスに返事を返す。 「ど、ドラゴン様かー…」 「はい。ドラゴン様です」  まっすぐな瞳に私は普段のドーラがどれだけプニプニ人形だとは想像もしないんだろうと思いながら私はごまかす様に「そっか」と返事を返す。
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