見える子と魔女と■

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「誰が鳴らしているんだろ?」  そう犯人はどんな人なのかと想像すれば想像するほどに私は好奇心が膨れ上がり、 抗えずパジャマのまま家を飛び出していた。  リーン……と音が近づいてくる。  私は音のする方へと導かれるように歩きだす。  リーンリーン……と音がさらに近づいてくる。 「人影?」  月明かりが雲に覆われているがそこにはペットのリードを握った人が向かい側からゆっくりと歩いてくる。きっとこの人が鈴を鳴らしているそうに違いない。  やっぱり周囲の大人が子供を寝かしつける為の作り話だったんだ。  それにしては作り話の為に町内を決まった時間にならし練り歩いているなんて手が込んでいる。 「まぁ、いいや家に戻ろ」  私はサンタクロースが親だった事に気づかされた時のように残念な気分になりながら家へと戻ろうとした時、鈴の音が止まり春の風よりも小さい声が聞こえた。 「……あ」  町内会の人が子供が起きていると思い焦っているのだろう。 ここは気付かなかった事にして家に戻った方が小言を聞かされずに済むと思い私は速足になるが、それを拒むかのように小さな声は続けて言った。 「ねえ聞こえた?」 「え?」  あまりにも想像とかけ離れた言葉に、私は振り返ると雲は晴れ1人と1匹がそこに立っていた。
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