見える子と魔女と■

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『どっかで見たような……』  バッグバックの前カバーが大きなまん丸お目目が印象的な顔の部分、荷物が入っている所がぷっくりとしたお腹、小さいがしっぽがあり、ちょうど少女の腰下あたりに重なり有っているから本当に生えているような見える。  私はメガネをかけ直し思い出せず頭を巡らせていると電車がカーブしたところで目を疑った。  なぜなら女の子は微動だにしなかったからだ。  電車でカーブをすれば少なくとも体に重力を感じるはずなのに女の子は動かないだけでなくバッグパックも動かなかった。  私は驚くと同時に、人形と目が合い人形が(まばた)きをした。 「!!」  私は人形の正体を思い出し驚きの声を上げそうになった瞬間、女の子は後ろ向きの状態で迫ってきた。  女の子は音もなく歩くではなく浮いているかのようにバッグバックに引きずられるような形で私の目の前まで近づき口元をモニュとした押さえつけてきた。  恐怖よりも何が起きているか分からない。  バッグバックの人形と私の距離は10㎝もない。  そしてバッグバックの前カバーがパタパタと動き出した。 「声を荒げるな、食いはしない。安心しな、いいな。とにかく声をあげるな」 と言い、私は返事の代わりに何度もうなずいた。 「よーし」 「人形が女の子で!本体!」 「こーら。混乱するのもわかるけれど、声をあらげるな」  人形の手にしてはのゴム風船の中に水を入れたようなフニフニした手で頭を叩かれる。  痛くはないが何だかその振る舞いが現状に納得は一切していない私を大人しく落ち着かせた。 「よーし、落ち着いたな」 「うん……」  人形の正体は昨晩見たベルの音を響かせていた動物の方だった。
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