雨の日

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 あの黒い霧である隣姉ちゃんの正体は魔女だった。  もとは魔法使いだったが無残な死を迎え、それに抗い人を辞めたモノの末路が黒い気体となって魔女。    生き続けるために魔力が欲しくて、転々と力をつけそうな子を見つけては呪いをかけていたみたいだ。  隣姉ちゃんが消えれば、徐々に呪いは解けると聞かされ安心したのだが、それでも災いの元は立てるなら立ったほうがいいと話になり、翌日ではあったが社に来るようにとエルシィに言われた。  抱きかかえられているドーラは私の頬をぽんぽんと叩きながらいった。 「これで見えなくなるぞ」  ふと直感めいたものが有ったのかもしれない。疑問が湧き、私は口にした。 「見えなく……ねえ、”物の怪”が見えなくなったら、ドーラたちは?」  ぽんぽんと叩いていた手が止まり、私はとっさにエルシィに顔を向けると私の疑問を笑顔で答えた。 「紬が想像している通りよ。残念だけれど、私たちも見えなくなるし、かかわっていた記憶は夢を見ていたように消えちゃうわ」  淡々と真実を伝えられ、私は驚きと寂しい気持ちが溢れる。 「せっかく知り合えてここまでしてもらったのに、私何も……」 「ふふ、良いんだよ。私たちと一線引くことで柚に災いが遠ざけるんだから」 「でもでも」 「その紬の言葉だけで十分だし、それに呪いも貰えるんだから、これ以上欲しいっていう奴には罰を与えられちゃうわ」  エルシィはふざけた口調で私に言い嗜めるが、溢れる涙が止まらず困らせていると、頬を叩きながらドーラが言った。 「これからも見守っているから安心して大人になりな」  その優しい言葉にドーラ達の気持ちを無碍にしてはダメだと気持ちを入れ替え、呪いを解く事を私は再度決意した。
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