紬の呪い

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「これだけじゃ足らん」 「そうなの?」 「案外お菓子の材料って見た目以上に必要なのよ」  エルシィは難しい顔のまま答えながらドーラに続けて言った。 「ドーラキッチン台の上の棚にはない?」  エルシィに言われ、ドーラは自身の体積に反した小さい羽をパタつかせながら少しだけ浮き、鼻で器用に上棚のプッシュ扉を開け顔を覗き込むようにして答えた。 「んー……ない」 「下の棚には?」  ドーラは顔を戻し、今度は下の棚に地面すれすれに飛びながら、これまた鼻でプッシュ扉を開けながら、今度は隅々見渡し答えた。  「ない!」 「買い忘れてたか……仕方ない。これ読んだら私が買いに行くわ」 「え?エルシィさんって買い物できるんですか?」  私はエルシィの言葉に、一日中家に籠って本を読んでいる姿が殆どだったから驚きでとっさに本音が出てしまった。 「……紬、それは私を引きこもりで表に出ない奴だと思ってない?」 「――いいえ、そんな事は決して」  エルシィからの厳しい視線を全力で反らしながら、ふとエルシィの機嫌が直る事を思いつき私は提案した。 「私が買いに行きましょうか?」 「紬が?」 「はい、お使いです。エルシィさんは私呪いの事で調べて貰っているので、その邪魔をするよりも、ただお菓子作りの見学している私がお手伝いをした方がwinwinの関係になれます」 「あーなるほど、それはいい考え」
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