紬の呪い

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 さっきまでの厳しい視線は何処へやら、エルシィはここ2日間でもっとも穏やかな表情を見せた。  エルシィが厳しい表情を見せていたのには理由がある、私の呪いの中に呪いが有った事が原因だ。  長年魔法使いをしているエルシィでさえ、見た事も聞いた事もない出来事に頭を悩ませ、解呪に手間がかかりが全くなく魔法使いが神にでも願いたくなる程に苦戦を強いられていた。  だから、厳しい表情からようやく見せた穏やかな表情に、私はホッと胸を撫で下ろしたが、エルシィの言葉に何を頼まれたか理解が追い付かなかった。 「それじゃ今日一日分で良いから3キロ買ってきて」 「……3キロですか?」 「重くて持てない?」 「いいえ、そうじゃなくて」  エルシィは私の筋力を気遣っての事なのだろうけれど、3キロなんて大きいペットボトル2本両手で持てばそれ程重くはない。  私が戸惑ったのはその重さではなく、今日一日の分量に私は驚いたのだ。  え、砂糖って一日で消費出来る物なのか?いやいやそんな事はないはず。だってお菓子を届けに行く時の量と重さを私が体験し知っている、それなら砂糖はどこに消えた。 「なら問題ないわね。はい、お財布。レシートは忘れないでね」 「は、はい」  我関(われかん)せずとばかりにエルシィは私に使い込まれた唐草模様(からくさもよう)のガマ口財布を両手で渡され、私は駅近くのスーパーへ向かった。
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