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ハイセンははじかれたように顔を上げた。
「許してくださりますか」
「もちろんだよ……いまさら、俺を見捨てるの?」
「…坊っちゃんがお望みとあらば、地獄まででもお供します」
俺たちは噛み付くようなキスを交わした。
*
それからの日々はあっという間だった。
俺が狂った演技を続けている8年の間に、王子と主人公は無事に即位して国王と王妃になったらしいけど、うまくいかずにわずか3ヶ月で離婚したらしい。
悪役令息を主人公とした物語の場合はざまあ的展開なのだろうけど、そもそも俺は学園に登校したことがないから、主人公と会ったこともなくてよくわからなかった。
俺の両親はとっくに隠居していて、家は家令でもあるハイセンが管理していたらしい。彼の手腕で家の事業は拡大し、田舎にいる両親にも、俺にも十分な金があった。
「ハイセンのおかげだね」
書斎で、事業の収支報告をハイセンから受けたあと、俺はしみじみとつぶやいた。
しかし、俺の言葉をハイセンは強く否定した。
「いえ、坊ちゃんのお力です」
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