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幸か不幸か、俺はこの手の創作物について知り尽くしている。俺の姉がそっちの趣味の、しかも積極的に布教するタイプの人間だったせいだ。もちろん、この世界についての知識もすべて姉由来である。
悪役令息に転生した場合のテンプレは2通りだ。いい人として振る舞って和解エンド、またはめっちゃ極悪人として振る舞って逆に主人公を断罪エンドだ。そしてそのどちらも、いきなり現れた隣国の王子と結婚して幸せざまぁとなるわけだ。
それは非常に困る。単純に、隣国の王妃なんて無理ゲーだ。
となれば、とるべき行動はひとつだ。
「あー……」
俺は部屋に引きこもり、窓の外を眺めて、「あー」とか「うー」とか声にならない言葉を発するお仕事に邁進した。1日12時間、なかなかハードな仕事だ。
これがなにかというと、単純に「退場エンド」を目指している行動である。
退場エンドとは物語の進行に関わることの一切を拒否することでたどり着けるエンドで、どこからともなくわいてきた幼馴染や理解のある彼くんとのほのぼのハピエンのことを指す。まあ、引きこもっていればそんな人との出会いもないのだが。
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