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ピエモンテはウェーズに住んでいて、国境を越えてくる必要があり、バイクでぶっ飛ばしても1時間はかかる。
彼は30代半ばで中肉中背で、背丈もナオトとそこまで変わらない。
シルバーカラーのショートカットに、青い瞳が美しいを持っている男だ。
「こんな時間にピエモンテがくるわけないでしょ…何考えているんですか」
「いや!すぐにピエモンテを呼び出す!お前もすぐこい!じゃあな!!」
ナオトが返答する前に、アテムは電話を切ってしまった。
また、アテムの自己中がはじまったと、天井を仰いだ。
アテムが夜中に知人を呼び出すときは、大概が自分が金でピンチな時か、薬をキメている時だ。
そう、アテムは薬物依存者でもあり、何度も刑務所と更生施設に入ることを繰り返しながら、細々と技術者としての仕事をしていた。
いつもアテムの自己中に巻き込まれるのは、ナオトとピエモンテだった。
ナオトはリビングに置き手紙を置いた。
“例によってアテムに呼び出された。少し行ってくる。ついでに金目になりそうなものを回収してくる”
何度もアテムに呼び出され、ただで動くほどお人よしではないのがナオトだ。
ラムエの事となれば話が別だが、毎度のアテムからのわけのわからない呼び出しともなれば、対価になるものを貰わねばやってられないだろう。
ナオトは玄関のカギをかけ、自転車をこぎ、アテムの自宅へ向かった。
アテムの自宅までは、自転車で全力疾走して約15分。
自転車のカゴに入れた『神魔約書』は、ナオトが全力で自転車をこいでいるせいで、ガタガタと揺れる。
「なんでこんな山の中に住んでるんだよ!マジきつい!」
表の仕事は普通の会社員だが、趣味で筋トレやテニスをしているので、足腰は鍛えられていた。
多少の山道は、普通の自転車でもこいで上がって行ってしまうだけの脚力を持っていた。
荒い呼吸を抑えず、アテムの自宅前に自転車を止め、『神魔約書』を持って玄関のチャイムを鳴らした。
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