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ピエモンテの言葉が聞こえていないのか、ナオトはずっとひとりで『神魔約書』とアテムの軍員表に目をやり続けた。
そして、ようやく、ナオトが『神魔約書』をたたみ、口を開いた。
「一応、『地球防衛軍』には入っておく」
ナオトの一言に、目が飛び出そうなくらいピエモンテは驚いた。
さっきまで『大人のヒーローごっこ』と言っていたのを、ナオトがこうも数分で覆したからだ。
これには、ピエモンテも黙ってはいられなかった。
「ちょっと待て!俺も入れってことか?『大人のヒーローごっこ』になんか付き合いきれないっすよ!」
怒りをあらわにするピエモンテを前に、ナオトはピエモンテにこう言った。
「“一応”と先に言葉をつけたからな?さっき言った通り、明日、神官にこの件は尋ねてくる…ラムエになんて言ったらいいんだか…」
「今日、ラムエちゃんとデートなんだろ?わざわざ、デートの時間を割いてまで神官のところへいかなくても…」
確かに、せっかくのラムエとのデートの時間を、こんなことに時間を使いたくはなかった。
しかし、イースの人間としては、これが嘘か本当なのか確かめる必要があった。
「アテムさん。軍員表のコピーをください」
アテムは仕事部屋にある印刷機で、すぐに軍員表を印刷し、ナオトに渡した。
「神のお告げは我々の命そのものです。それが嘘なら処刑。本当なら、それに従い地球防衛軍を動かしましょう。今日のところはこの辺で」
ナオトは、スパっと言い切り、ピエモンテとアテムを置いて、自転車に乗った。
自宅に到着する頃、時間は4時を過ぎていた。
もうすぐ夜が明けようとしていた。
自転車置き場に自転車を置くと、『神魔約書』の間から数枚の札束が出てきた。
「アテムさん。悪いね。報酬をちょいと抜き取らせてもらったよ」
ナオトが自宅へ戻ると、ラムエはまだ眠っていた。
置手紙を破いてゴミ箱に捨て、札束を財布にしまい、『神魔約書』を本棚に戻して、もうひと眠りした。
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