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フレスコ画のような宗教の絵が天井いっぱいに描かれた聖堂は、200年以上が経っているという。
神と悪魔が戦う絵や、神が人間に審判を下す絵が描かれている。
パイプオルガンが置いてあり、木造りの椅子が無数に置いてあった。
国民たちが、礼拝の時間に合わせてゾロゾロと聖堂にやってくる。
やってくる国民のほとんどが『神魔約書』を大事そうに抱えて歩いてくる光景は、ラムエにはまだ異様に見える。
どうしても礼拝に慣れないラムエは、早く礼拝が終わってほしくて仕方なかった。
ナオトと一緒に後ろの方の席に着席すると、やがて人でいっぱいになった。
そして、10分と経たずして、礼拝が始まった。
男性が数人やってきて、1人は登壇に立ち、もう一人はパイプオルガンの前に座る。
残りの男性は、変わった形の帽子を被っていた。
まるで古代の器を型取ったもののようだ。
共通しているのは、ワイシャツにスラックス姿、何か人形のような形のネックレスを着けていること。
この人たちがいわゆる神官たちだ。
神に選ばれ、神にお仕えし、神のお告げを聞くことができる人たちだ。
普通の人とは違う、神聖なオーラを放っている。
「それでは、今週の礼拝をはじめます。パイプオルガンから奏でる音で、どうぞ礼拝に向けて心を静めてください」
壇上にいる男性の一言で、パイプオルガンを弾きはじめ、礼拝がはじまった。
聖堂にいる国民全員がパイプオルガンの奏でる曲に耳を傾けるも、ラムエだけがそわそわしている。
ラムエは、パイプオルガンの音がどうしても苦手なのだ。
ナオトと同棲して半年も経っていないが、この音だけはどうしても慣れない。
周りを見ていると、ラムエは何か小さな影を見た。
キョロキョロして、影を追うと立ち上がろうとしたラムエを、ナオトがすぐに止めた。
「おい...!何やってるんだ、座ってろよ」
「あ…ごめん」
ラムエには、聖堂の遠くの方に見えた小さな影は、神官たちがつけているネックレスの人形がサッと出てきて、消えていくように見えたのだ。
パイプオルガンの演奏が終わると、神官たちが壇上の周りに並ぶ。
そして、神魔約書を広げ、神々の言葉を伝えはじめた。
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