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一方ナオトは、神官と聖堂の奥の部屋へ入り、アテムの話をしていた。
『地球防衛軍』なる軍員表を見せると、やはり神官たちは怪しく思うばかりだ。
「ピエモンテというものは、ウェーズの人間だろ。殺傷能力の武器や薬を作っている国の者ではないか」
「アテムという男は、4つの国の中間に住んでいて、どこの国にも属していない。そんな人間が神のお告げを聞けるわけがない」
「嘘か真か、真実の天秤にかけてみますか?」
神官たちが口々に言い合うのを、ナオトはただ見ているしかなかった。
真実の天秤とは、聖堂で神のお告げが嘘か真か分からない時に、直接神に真実を問う方法だ。
片方の皿に聖堂で育てられた木の実を5つ置き、もう片方の皿に、神に問いたい事を書いた紙などを置く。
木の実の方に傾けば、間違いなく神のお告げで、反対に傾けば嘘のお告げということになる。
「では、神にお聞きしましょう。ナオト、あなたもついてきなさい」
普段は入ることが許されない真実の天秤がある部屋に、今回はナオトは特別に入ることができた。
古びたブロンズの天秤の真ん中には、聖堂に飾られていた神の彫刻が施されている。
一人の神官が、皿に木の実を乗せてやってきた。
「では、これより、真実の天秤を使い、神様に真実を問う。まず、ナオト、『地球防衛軍』の軍員表を四つ折りにして、天秤の右側の皿に置きなさい」
「はい」
ナオトは丁寧に軍員表を四つ折りにして、天秤の皿の上に置いた。
続いて神官が天秤の左の皿に、一粒ずつ木の実を置いていった。
5つ木の実を置いてから、神官は後ろに下がる。
天秤は神によって動かされるものだそうで、神官たちは天秤の動く行方を見ているしかなかった。
全員で天秤を見守る中、天秤は予想だにしない動きをして見せた。
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