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「あー、腹が立つ!」
部屋に帰った私は、そう言って、ベッドに体を沈めた。
「姫様、私以外と一緒にいる時に、そんな声をお出しにならないでくださいね」
トリネに言われ、
「分かってるわよ……」
私は答え、身を起こした。
「にしても、結婚相手だっていうそのおっさん王子を真っ二つに出来たらどんなに気持ちいいかと思うわ」
私はそう言って、剣を振り回すふりをした。
自慢ではないが、私の剣術はまあまあの腕前だ。
そこらの冒険者や軍人よりはよほど上だと、トリネからも近衛隊の武術師範からも、お墨付きをいただいている。
「本当にそうなされたら、我が国は炎に巻かれますね」
トリネはため息をついた。
「冗談よ、マジでそんなことするわけないでしょ」
私は笑ったが、トリネはどうにも安心できないようだ。
「やれやれ。あまり姫様を元気にしておくと、どんな方向に暴走するか分からなくて不安になります」
「そーお?」
「姫様が産湯をつかった頃からのつきあいですからね、私は」
「あの頃はトリネも小さかったわよね」
「赤ちゃんだった姫様に、分かるはずないでしょう」
「冗談、冗談」
私は手を振ったが、トリネはそれには応えず、
「……最後のお土産をさしあげましょうか?」
と、つぶやいた。
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