気晴らしの冒険

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「お土産?」  私がきょとんとして言うと、トリネが続けた。 「私は姫様よりも外に出る機会が多いので、国中の噂がよく入ってくるのですが――」 「うん、うん」  トリネがこう言う時は、私にとって『楽しい』話が待っている時だ。 「風の噂でですね、この王都から東に三日ばかり行った村で、化け物が出るというお話がありまして」 「地元住民が困ってる?」 「まあ、そうなりますね」 「騎士団か冒険者に頼めばいいじゃない?」 「騎士団は、よほど被害の規模が大きくなければ動けませんよ」 「冒険者は?」 「あの村は今年はあまり実りがよくなくて、報酬目当ての冒険者に頼むのはとてもとても」  トリネが首を振った。 「……つまり、誰か、義に燃えた強者の手助けが必要ってわけだ」 「遠回しに言えばそうなりますね、それが誰のことか分かりませんが」 「行くわよ、トリネ」  私はベッドから立ち上がった。 「おや、シャルル様、どこかへお出かけで」 「……あんたが持ってきたんじゃない、この話を」 「そうでしたかね」 「とにかく行くわよ、国を離れる最後の最後に、民のためにひと働きよ」 「はいはい」  こうして私たちは、東の村の化け物退治に、出かけることになったのである。
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