19人が本棚に入れています
本棚に追加
「お土産?」
私がきょとんとして言うと、トリネが続けた。
「私は姫様よりも外に出る機会が多いので、国中の噂がよく入ってくるのですが――」
「うん、うん」
トリネがこう言う時は、私にとって『楽しい』話が待っている時だ。
「風の噂でですね、この王都から東に三日ばかり行った村で、化け物が出るというお話がありまして」
「地元住民が困ってる?」
「まあ、そうなりますね」
「騎士団か冒険者に頼めばいいじゃない?」
「騎士団は、よほど被害の規模が大きくなければ動けませんよ」
「冒険者は?」
「あの村は今年はあまり実りがよくなくて、報酬目当ての冒険者に頼むのはとてもとても」
トリネが首を振った。
「……つまり、誰か、義に燃えた強者の手助けが必要ってわけだ」
「遠回しに言えばそうなりますね、それが誰のことか分かりませんが」
「行くわよ、トリネ」
私はベッドから立ち上がった。
「おや、シャルル様、どこかへお出かけで」
「……あんたが持ってきたんじゃない、この話を」
「そうでしたかね」
「とにかく行くわよ、国を離れる最後の最後に、民のためにひと働きよ」
「はいはい」
こうして私たちは、東の村の化け物退治に、出かけることになったのである。
最初のコメントを投稿しよう!