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「そしてタンパク質でカマキリを操って川に入らせる……。すごい仕組みですね」
「ええ。それで、この話だけだとハリガネムシはなんだか悪者みたいですが、先程の神戸大学の研究者が行なった別の研究によって、ハリガネムシが入水させたカマドウマ類が、渓流に棲む魚の餌としてかなりの比率を占めていることが明らかになったんです。ハリガネムシも生態系の成立に一役買っているんですね」
「あれは益虫でこれは害虫だとか、安易に決めつけてはいけないんですね。貴重なお話をありがとうございました」
玲香がそう答えた時、胸飾りの近くでデザイナーの長谷川と話し込んでいた渡が彼女を呼んだ。
「すみません、ちょっと失礼します。あの……」
玲香は一瞬ためらった後、声をひそめて付け加えた。
「あの人がつまらない謎解きを用意しているんですが、どうかお気を悪くなさらないでくださいね。先生なら簡単にお解きになれるはずですから……。ここの展示品が手がかりになります」
玲香は催促するような夫の目を気にしながらそこまで話すと、足早に柏木のもとを離れた。
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