玉蝉(ぎょくせん)

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 蜻蛉玉は色ガラスのビーズに他の色ガラスを溶かし付けて文様(もんよう)を生み出したもので、古代エジプトで製造が始まり、交易によってエジプトやメソポタミアから古代中国にもたらされた。名前はこの玉がトンボの複眼を連想させることに由来し、英語圏では単にアイビーズと呼ばれている。展示されている蜻蛉玉は二千二百年以上前の戦国時代のもので、褐色の地に、空色と白の同心円状の文様や、小さな白い点の帯が描かれたりしていて、なかなか美しい。―と同時に、その複雑な文様には、魔除(まよ)けなどの呪術的な意味があったようにも思われる。  玉虫装飾馬具はその名の通り、玉虫の羽による装飾が施された馬具で、福岡県の船原古墳から出土した杏葉(ぎょうよう)という、馬の尾から(くら)にかけ渡す紐につける飾り金具を忠実に再現したものだった。杏葉という名は、丸みを帯びた形が(あんず)の葉に似ているところからで、幅は十センチ程、植物の葉の文様を透かし彫りにしたハート型の金銅板(こんどうばん)と土台の鉄板の間に、二十枚の玉虫の羽が敷き詰められている。
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