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「現場にいらした柏木さんのお知恵を拝借できるのは心強い限りだ。それで、何か気になっておられることはありますか?」
「やはり、まず必要なのは共犯者に関する検証でしょうか」
「そうですね。例の破裂音が偶然のはずがない。スマートホンのメール機能か何かで、タイミングを計っていたんでしょう。そして、二度の破裂音で来場者の気がそれたすきに玉蝉を盗んだ」
「共犯者がいたということは、犯人が事前に、今日ここで玉蝉が披露されることを知っていたことになりますね」
「ええ。犯人たちが周到に計画を練っていたことは間違いありません。ちなみに、破裂音の直後に乗用車が一台、このビルの前に停車してタイヤの点検をしていたことが、近所の住民の証言で確認できています」
柏木はアンティークコレクターの田村に声をかけた。
「田村さん、先程のご様子では、スカラベの胸飾りや他の展示品にあまり関心をお持ちではありませんでしたね。それなのにわざわざこちらにいらしたのは、綾部さんと競り合ったという玉蝉をご覧になるためですよね?」
「ああ。だが、俺は玉蝉を盗んだりしていないからな」
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