6人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
柏木はボール紙製の大型封筒から透明なプラスチックの筒を二本取り出すと、堂島の眼前に差し出した。筒には通気性の良いスポンジの栓がされていて、中には体長一センチ程の小さなコガネムシが一匹ずつ入っていた。頭部や前胸部は緑色で前翅は褐色、全身に金属光沢があり、小さいがなかなか美しい。
「このコガネムシ君たちに、犯人を嗅ぎ当ててもらおうというわけです」
柏木は筒を軽く振って見せながらそう言うと、いく分困惑した表情の堂島に笑いかけた。
柏木は貴金属店の店主、今野に新たな丸テーブルとハサミ、そして数枚の紙を用意して欲しいと頼んだ。程なく準備が整うと、柏木は科学の公開実験の講師を務めているかのような口調で、これから行おうとしていることを人々に説明した。
最初のコメントを投稿しよう!