玉蝉(ぎょくせん)

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「この昆虫は香水に含まれる植物由来の香料の匂いに、非常に強く引きつけられることが知られているんです。先ほど個別に確認させていただいたところ、香水やオーデコロンをつけていらっしゃるのは女性二人だけでした。綾部さん以外の男性五人は、もし香水の匂いがするなら、それは玉蝉を盗んだせいだということになる」  柏木の思いがけない言葉に、五人は思わず顔を見合わせた。 「そんなにうまく行くもんですかね?」  剣持耕太郎が首を傾げながらそう言うと、今野がうなずいた。 「万一(まんいち)間違いがあったら(こと)だ」 「まあ、やっていただこうじゃありませんか。柏木先生は専門家なんだから」と萩野が言った。 「ありがとうございます。警察犬のような訓練を受けているわけではないので、不安に思われるかもしれませんが、誘引物質に対する反応は本能に基づくもので、非常に正確ですから心配は要りません。人間が指示したものを捜すことは不可能ですが、我々が捜したいものと彼らが求めるものが一致している限りは、警察犬に()けを取らない働きをすることができるんです」
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