玉蝉(ぎょくせん)

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 偏光というのは振動方向に(かたよ)りのある光のことで、人間は振動方向がそろっていない自然光と偏光を見分けることができないんですが、昆虫は偏光を感知できる視細胞が複眼に含まれているおかげで、両者を見分けることが可能なんですね。ミツバチも太陽光の偏光パターンを利用して方向を把握していることが知られています。太陽や月そのものを目印にする方法は、雲などに邪魔されると使えないので、空全体に広がっている偏光パターンを利用する方が有利なわけです。  なお、月光の偏光パターンを利用していることが判明しているのは、今のところタマオシコガネくらいのものです。さらに、先程(さきほど)の研究者によると、月の出ない夜には、夜行性のタマオシコガネは天の川の光を利用しているのだそうです。  古代エジプト人に太陽の運搬者(うんぱんしゃ)と見なされたタマオシコガネが、天空の様々な光を驚くほど巧妙な仕組みで活用しているというのは、実に興味深いことではないでしょうか……。私の話は以上とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました」
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