玉蝉(ぎょくせん)

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「畜生、()めやがったな!」 「お静かに。共犯者が宋文堅だということも、あなたが手袋に入れた玉蝉を窓から投げ落として、あの男に拾わせたことも分かっている。騒いでも無駄だ」  図星(ずぼし)を指されて、萩野は返す言葉もなく黙り込んだ。堂島は警官二人とともにすばやく萩野に歩み寄った。 「萩野浩二さん、署まで同行願います。携帯電話はこちらの警官にお預けいただけると有難い。任意ですが、携帯を使わないようにずっと見張られているよりは気が楽だと思いますよ」  萩野は大人(おとな)しく堂島の言葉に従い、警官二人に連行されて部屋を去った。 「柏木さん、萩野に目をつけられたのはいつからなんですか?」 「例の香水の匂いに気づいてからです。あの箱からはかすかに(かび)臭い匂いがする。香水はそれをごまかすためなんです。まともなアンティーク商ならそんなことはしないでしょう。きちんとした手入れをするはずだ」 「目先の利益のために欠陥品を売る人物だと」 「ええ。そして、宋文堅も恐らく悪徳ブローカーです。玉蝉の一級品となると、文化財クラスの古墳からの盗掘品(とうくつひん)でしょう」
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