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「やむを得ませんね。僕に人を見る目がなかったんだから……」
綾部はため息まじりに答えた。
「それにしても、あのコガネムシには驚かされましたよ。かすかな匂いしか残っていなかったはずなのに、ぴたりと嗅ぎ当てるなんて、警察犬も形なしだ」と堂島は柏木に言った。
「そのことなんですが、実を言うと、さっきの実験は萩野が言った通りインチキなんです」
「ええっ?」
思いがけない柏木の言葉に、人々は一斉に驚きの声を上げた。
「萩野が犯人であることは確信していましたが、肝心の証拠がなかった。時間がたてば玉蝉を取り戻すのは難しくなる。そこで、コガネムシを使って彼を罠にかけることにしたんです。手袋をしていたようだし、実際には、香水の匂いはついていなかったでしょう」
柏木はそう言いながら、ジャケットの内ポケットから五センチほどのスプレー付きの小瓶を取り出した。
「それは?」
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