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どちらのスカラベも鳥のような翼を持っているが、その翼は金で作られた枠に、細長く切られたトルコ石やラピスラズリ、円形または三角形に切られたカーネリアンがはめ込まれて、一枚一枚の羽根が表現されているのだった。金の色は本物の胸飾りと同じように黄色味が強く、純度の高さをうかがわせた。スカラベ本体のラピスラズリも、白色と金色の斑点の散り具合まで見事にオリジナルを再現していて、先程の剣持の賛辞が単なる社交辞令ではないことを裏付けていた。胸飾りの傍らで説明役を務めている宝飾デザイナーの長谷川博人は、上野の森美術館で開催されたツタンカーメン展に通い詰めて、数十枚に上るデッサンを描いたことを人々に語った。
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